乃木坂46のクリスマスライブが提示した、選抜・アンダーそれぞれの「広がり」

乃木坂46クリスマス公演にみる「広がり」

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 それを好転させたのが、今回のアンダーライブの2公演でセンターを務めた寺田蘭世だった。2016年のアンダーライブはここまで、東北・中国地方への進出によって新展開を迎え、またライブ一本を通して演劇性を高めた演出によって世界観を作る、昨年までとは異なったフェーズに入っていた。寺田はそれらのライブでフロントとして活躍してきたが、センターとして公演を担うのはこの『Merry Xmas Show 2016』が初めてになる。タイミングとしては直近の16枚目シングルにおけるフォーメーションに基づいたものだ。しかし、アンダー公演が4日間のうち2日目および4日目にあたるため、日本武道館で行なわれる乃木坂46の今年のライブの締めを、彼女をセンターに据えて迎えるということでもある。それが見事に彼女のポテンシャルを一段上に引き上げた。センターに立ち、スクリーンに大写しになる寺田の表情は、すでに次代の顔になる準備ができているように感じられる。16枚目のアンダーセンターとしてばかりではない、次代へ向けた一歩としてここで誕生したセンターの意味は大きい。

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 次代を担う軸が見出されたことは、彼女一人だけではなく、メンバー全体へと波及する。中心が明確に定まることは、そこを基点にしながらそれぞれのメンバーの立ち位置や色合いを再構成する機会になる。寺田の抜擢に引っぱられるように、他の2期生メンバーたちも線の太さを身につけて力強さを見せた。ただしまた、年末のアンダー公演の恒例となり、今回は全員が表題曲をパフォーマンスした「全員センター」企画では、一期生メンバーたちの表現力の確かさを再確認することにもなった。もともと高評価を受けるアンダーライブだが、アンダーメンバーのイメージを固定化させないこともまた、継続のためには重要である。寺田という新たなセンターの起用をきっかけに期待するのは、寺田自身はもちろんのこと、アンダー各メンバーが充実度を維持しながら、新しい顔を見せることだろう。

 選抜、アンダーの公演が見せた「現在」は、それぞれに違う姿をしている。過去最高の充実度を見せる乃木坂46の顔としての選抜メンバーは、タレントとしての強さを見せながら、同時にここしばらくの表題曲を通じて作り上げてきた「作品」としての水準の高さをステージで成立させてみせる。それがグループの、対世間に向けての最も「成熟」した部分だとするならば、アンダー公演は寺田を軸にして、次のスタイルを見せる準備ができていることを示した。また寺田の存在は、選抜とアンダー、1期生と2期生、2016年と2017年など、いくつもの要素を接続させて考えるためのポイントになるだろう。今年の武道館ライブは、ラストに歌われる楽曲「乃木坂の詩」も、グループ全員でのパフォーマンスを見ることはなかった。しかし、それでもなお、選抜公演とアンダー公演を重ねた4日間の道程は乃木坂46が現在持っている広がりを総体として一覧させるものになっていた。

(写真=(C)乃木坂46LLC)

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

■ライブ情報
『乃木坂46 5th YEAR BIRTHDAY LIVE』
2017年2月20日(月)※橋本奈々未卒業コンサート
2017年2月21日(火)
2017年2月22日(水)
会場:さいたまスーパーアリーナ

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