森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.27
Hi-STANDARD、Shout it Out、岡崎体育……彼らは新作でターニングポイントをどう越えた?
久々の復活、○周年のアニバーサリー、音楽的なモードチェンジ、メンバーの脱退。音楽活動を続けていけば、ターニングポイントというものが必ず訪れます。望む・望まないに関わらず、絶対に直面せざるを得ない変化の時期をどう乗り越え、どんなストーリーを紡げるかが、長く支持されるアーティストになれるかどうかの分岐点と言ってもいいでしょう。今週はそんな節目を迎えているバンド/グループの新譜を紹介します。
今年メジャーデビュー10周年を迎えたGreeeeNのニューシングル曲「暁の君に」は、<それぞれに抱えた未来に向かい 信じて進んで 違えた誓い>というフレーズが心に残る、彼ららしい前向きなナンバー。“夜が明ける瞬間に不安や葛藤が消え、希望の光が見えるはず”というメッセージを込めたリリックは、まさにGReeeeNの真骨頂と言えるだろう。ギター、ピアノ、オルガンなどの生楽器を活かしたオーガニックな雰囲気のアレンジ、サビの入った瞬間に高揚感を増す4つ打ちのビートを軸にしたサウンドメイクからは、現在の彼らの音楽的な成熟ぶりも感じ取れる。2017年1月7日には初のさいたまスーパーアリーナ公演が決定。さらに1月下旬からはGReeeeN結成のエピソードをもとにした映画『キセキーあの日のソビトー』(松坂桃李、菅田将暉のW主演)が公開されるなど、来年は彼らの魅力に触れる機会がさらに増えそうだ。
10月にリリースされた、Hi-STANDARDの約16年半ぶりのシングル『ANOTHER STARTING LINE』が星野源、SEKAI NO OWARIを抑えチャート1位を獲得したのは、“ノンプロモーションで、いきなり店頭にCDが並ぶ”というリリース方法だけではなく、楽曲そのものに「ハイスタがついに帰ってきた!」と思わせるに十分な説得力が備わっていたからこそ。そして、現在の彼らのモチベーションの高さは約2カ月というバンド史上最短のペースでリリースされるカバーシングル『Vintage & New,Gift Shits』からも強く感じることができる。収録されているのは、美しいコーラスワークとオーセンティックなロックンロールが共存する「I Get Around」(原曲:The Beach Boys)、多彩なリズム・アレンジが印象的な「You Can’t Hurry Love」(原曲:The Supremes)そして1997年にリリースされた「Money Changes Everything」(原曲:The Brains)、「Happy Xmas (War Is Over)」(原曲:John Lennon)の4曲。スタンダードとなっている名曲をピックアップするセンス、卓越したアレンジ・ワークは、パンクバンドとしてどう成熟するべきか? というテーマに対するひとつの回答と言えるかもしれない。
CD BOX SET『MUCH TOO ROMANTIC!~The Collectors 30th Anniversary CD/DVD Collection』、ファン投票によるベスト盤『愛ある世界』(THE COLLECTORS -30th Anniversary Session-)など、30周年を記念したアイテムのリリースが続いていたTHE COLLECTORSから通算22作目のオリジナルアルバム『Roll Up The Collectors』が届けられた。1986年の結成以来、1ミリもブレるなくモッズのスタイルを貫き、変わらないために変わり続けてきた彼ら。粋で孤独でロマンティックなTHE COLLECTORSの音楽は、本作でも完璧に機能している。The Who直系とも言える「恋はテトリアシトリス」など、ファンが想起する“らしさ”を踏襲しつつ、まったく新しい感触を持ったロックンロールへと結びつけるセンスはここにきてさらに向上しているようだ。そして2017年3月1日には初の日本武道館ワンマン公演を開催!