さかいゆうが語る、音楽への情熱とポップスの難しさ「止まることもなく、ずっと続けてる」

さかいゆうが語る音楽への情熱とポップス

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「ポップシンガーはその人自身が売れないと意味がない」

ーーシングルの2曲目に収録されている「Drowning」は「いま、さかいゆうがダンスミュージックをやればこうなる」という楽曲だと感じました。オリエンタルな雰囲気が少し感じられたり、いろんな音楽の要素が混ざっているのも、さかいさんの個性ですよね。

さかいゆう:うん、「Drowning」はダンスミュージックですね。シティポップ、ファンク、ディスコなんかが混ざっていて。シンセの感じはザ・ウィークエンドを意識してるんですけど、出来上がってみるとジャンルがわからない曲になりましたね。やっぱりジャンルは関係ないんですよ。グッドミュージックはグッドミュージックだし、僕もそういう音楽をやりたいと思ってるので。作品を作れば作るほど、ひとつのジャンルに属せない感じになってますけどね、僕の場合は(笑)。ずっと前にユーミンさんがインタビューで「じつはポップシンガーがいちばん孤独」ということを仰ってたんですけど、その通りだなって思います。

ーーポップシンガーの孤独というのは、具体的にどういうことなんですか?

さかいゆう:ポップスをやる人は、自分そのものが売れないとダメなんですよ。たとえばレゲエを好きな人は日本にも何万人かいて、新しいレゲエのアーティストが登場したら、そのうちの何千人かはCDを買うと思うんです。ロックもそうだし、ヒップホップもそうですよね。そう考えると、ジャンルに属せないポップシンガーがいちばん孤独なんですよ。そのジャンルのなかで売れるんじゃなくて、その人自身が売れないと意味がないから。

ーーなるほど。ジャンルに属せない部分、ポップスのほうが音楽的な自由度は高いのでは?

さかいゆう:確かにいろんなことは出来るけど、シンガーソングライターということで言えば「歌詞と声が聴ければいい」というリスナーの方も多いですからね。僕の場合はさらにわかりづらいというか、たとえば「Drowning」はダンスミュージックだけど、僕はダンスしないじゃないですか。ブルーノ・マーズみたいに踊って表現する人もいますけど、僕は音楽だけに頼ってるところが大きいと思います。まあ、この体型で踊っても笑われるだけなんで(笑)。

ーーでも、ダンスミュージックは好きですよね?

さかいゆう:好きですね。ダンサブルなライブをやってみたいなと思うこともあるんですよ。大きい会場で1万人くらいの人たちと一緒に楽しむというか、そういう状況でしか得られない一体感ってありますから。ただ、いまのところはホールでライブをやることが多いし、楽曲をしっかり聴かせるということを意識していますね。

ーーパフォーマーというより、あくまでも楽曲のクオリティで勝負すると。

さかいゆう:まあ、そうなんでしょうね。細かい部分まで音を聴いてもらいたいという欲がどうしても勝っちゃうから。それは音源も同じで、ミックスやマスタリングにもすごくこだわってるんですよね。

ーー今回のシングルの音もいいですからね。低音がしっかり出ていて。

さかいゆう:うん、ローが出てるっていうのは大事なので。ずっと洋楽を聴いてきたせいもあるんですけど、低音がしっかり聴こえていてほしいんですよね。そのうえで日本人的な繊細さを反映できるのがいちばんいいと思ってます。“パワー+繊細さ”というか。洋楽には花鳥風月を感じさせるところがないし、ずっと聴いていると疲れてくるんですよ、僕は。自分の音源に関しては、パワフルなローも欲しいし、すべての音の細かい部分まで聴こえてほしいし、さらにボーカルの息づかいまで伝えたくて。すごく大変ですよ、ミックスとかマスタリングは。そのぶん、出来上がった曲は楽しんで聴けるんです。自分の音楽がいちばん好きですからね。

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ーー3曲目の「But It’s OK!」はR&Bテイストのミディアムチューンですね。

さかいゆう:3曲のなかではいちばんエネルギッシュかもしれないですね。歌詞はドラマ(NHKプレミアムドラマ『受験のシンデレラ』)の台本を読ませてもらってから書きました。僕も一応、受験生をやっていたことがあるので、そのときのことを思い出して。あまり大学に行く気もなかったし、受験した学校も忘れちゃってるくらいなんですけど(笑)。その時期に(音楽を志していた)友達が亡くなって、音楽の道を目指し始めて……。いま振り返ってみると、中学を卒業したら高校に行かないで、すぐにミュージシャンをやれば良かったと思いますね。高校で勉強したことなんてぜんぜん覚えてないし。まあ、人それぞれにタイミングがあるから、しょうがないですけど。

ーーニューシングルの初回生産限定盤の特典CDには、11月21日から始まる全国ツアー『POP TO THE WORLD』のリハーサル音源4曲を収録。今回のツアーはどうなりそうですか?

さかいゆう:バンドっぽいライブになると思いますね。いままではスーパーミュージシャンたちによるJ-POPという感じだったんですけど、今回はバンドらしさを出そうと思っていて。バンドでやれることを凝縮して、カッコいい部分を抽出するというか……上手く説明できないけど、ライブを観てもらえればわかりますよ。すでにバンドの一体感がハンパないし、ストイックな良いライブになると思うので。

ーー12月21日NHK大阪ホール、25日の中野サンプラザの公演は『“POP TO THE WORLD” SPECIAL』というタイトルが付けられていますね。

さかいゆう:クリスマス・スペシャルですね。これも初めてなんですけど、クリスマスソングを何曲か演奏しようと思っていて。洋楽、邦楽それぞれ2〜3曲やる予定なんですけど、さかいゆうにしか出来ない選曲だし、みなさんにも喜んでもらえると思いますね。

(取材・文=森朋之/写真=池田真理)

■リリース情報
『再燃SHOW』
発売:2016年11月16日(水)
初回生産限定盤(CD+CD):¥1,852(税抜)
通常盤(CD):¥1,204(税抜)
■DISC 1 (初回生産限定盤・通常盤 共通)
M1.再燃SHOW ※映画『幸福のアリバイ~Picture~』主題歌
M2.Drowning
M3.But It’s OK ! ※NHKプレミアムドラマ『受験のシンデレラ』主題歌
M4.再燃SHOW (backing track)

■DISC 2 (初回生産限定盤のみ)
「“POP TO THE WORLD”~rehearsal take~」
M1. よさこい鳴子踊り
M2. Headphone Girl
M3. ストーリー
M4. 再燃SHOW

■ライブ情報
『さかいゆうTOUR “POP TO THE WORLD”』
11月21日(月) 仙台darwin
11月22日(火) 新潟LOTS
11月29日(火) 札幌Sound Lab mole
12月6日(火) 高松DIME
12月7日(水) 広島セカンドクラッチ
12月9日(金) 福岡Gate'7

『さかいゆうLIVE “POP TO THE WORLD” SPECIAL』
12月21日(水) NHK大阪ホール
12月25日(日) 中野サンプラザ

■オフィシャルサイト
http://www.office-augusta.com/sakaiyu/

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