柴 那典の新譜キュレーション 第8回
アニメーションMVの良作続くーーP・ロビンソン&マデオン、GOUACHE 、さユりらの作品を解説
RADWIMPS「スパークル [original ver.]」
RADWIMPSのニューアルバム『人間開花』からの一曲。彼らが音楽を担当した映画『君の名は。』のサウンドトラックにも収録された「スパークル(movie ver.)」は映画の中でも重要なパートを担った楽曲だったが、そのオリジナルバージョンがこの曲だ。
そして、この「スパークル [original ver.]」のミュージックビデオは新海誠監督が手掛けたもの。映画『君の名は。』を新たに編集し直した映像に加えて、MVのために新たに描き下ろされたカットを加えたものになっている。
「スパークル [original ver.] –Your name. Music Video edition-」と題されたこのMVを観て改めて痛感するのは、新海誠監督とRADWIMPSというバンドが本当に深いところまで感性や価値観をぶつけ合ってクリエーションに当っていたんだな、ということ。
以前にも当サイトで書いたように、(https://realsound.jp/2016/08/post-8839.html)、『君の名は。』という映画は音楽とアニメーションが今までになかった次元で融け合い、手を取り合った作品だった。
だからこそ、新海誠監督も楽曲にぴたりと符合するMVを作ったのだと思う。
アルバムについて、そして「光」という曲のMVについて(これもめちゃめちゃ素晴らしいのだ!)は、また改めて機会があったら書こうと思う。
酸欠少女さユり「アノニマス」
そのRADWIMPSの野田洋次郎が表題曲の楽曲提供・プロデュースを手掛けたシングル『フラレガイガール』をリリースする“酸欠少女”さユり。そのカップリングに収録された「アノニマス」は彼女自身が作詞作曲を手掛けているのだが、こちらのミュージックビデオも興味深い内容となっている。
「2.5次元パラレルシンガーソングライター」をキャッチコピーに活躍する彼女。ライブではステージ前に紗幕が張られ、歌詞の言葉やビジュアルイメージと実際にステージに立つさユり自身の歌う姿が重なり合うようなパフォーマンスが繰り広げられる。アーティストのビジュアルにも、2次元のキャラクターイラストと3次元の写真が重なり合っている。彼女の歌詞の世界観は、現実世界の中で感じる息苦しさや違和感、そしてそこから一歩踏み出す決意や覚悟を描いたものが多い。そういう意味ではamazarashiの世界観に通じるものもある。ただ、さユりの場合は「レイヤーが重なり合っている」というのがポイントだろう。
この「アノニマス」のMVでも新宿の街に立って裸足でアコースティック・ギターをかき鳴らす「さユり」(=3次元の彼女自身)に加え、後悔の象徴“さゆり”と、2次元キャラクター“サゆり”が登場するストーリーが描かれる。
実写とCGが交錯する演出が、彼女の世界観と深くリンクしている。