太田省一『ジャニーズとテレビ史』第二十六回:Hey! Say! JUMPとジャニーズWESTに見る「これから」
Hey! Say! JUMPとジャニーズWESTの好調ぶりが示す、ジャニーズの「これから」
一方、現在のジャニーズグループのなかでは最もデビューが新しいジャニーズWESTも、個々のメンバーの活動が目に付くようになってきた。
今期のドラマでは、藤井流星が『レンタル救世主』(日本テレビ系)に出演している。依頼人が持ち込む悩みや難問を解決する会社「レンタル救世主」で働く金髪の青年役。無類の目立ちたがり屋で格闘技にも長けているというユニークな役柄だが、彼の持つ華やかさがコメディタッチの演出のなかでうまくはまっている。
ほかのメンバーのドラマや映画への出演も、今年相次いでいる。先ほど挙げた『HOPE~期待ゼロの新入社員~』では桐山照史が中島裕翔の同僚役、『ノンママ白書』(フジテレビ系)では濱田崇裕が広告代理店の企画制作部員役、『世界一難しい恋』(日本テレビ系)では小瀧望が嵐・大野智扮するホテルチェーン会社の社長の部下役を演じた。重岡大毅も公開されたばかりの映画『溺れるナイフ』で菅田将暉・小松菜奈と共演している。
彼らの大きな持ち味のひとつは、自然ににじみ出てくるポジティブさだろう。ポジティブさに無理がない、とでも言ったらいいだろうか。いま挙げたドラマの役柄でも、そうしたポジティブなキャラクターが生かされたものが多い。
そこにはひとつ、関西のノリも大きく関係しているに違いない。言うまでもなく彼らは全員関西ジャニーズJr.出身であり、現在、彼らの冠バラエティ番組である『エージェントWEST!』(ABCテレビ)も関西のテレビ局が制作している。毎回メンバーが番組から与えられたミッションをロケに出かけてクリアするというこの番組、関西ローカルでの放送のため関東地区の視聴者にはまだなじみがないが、そこでも彼らのノリの良さが存分に発揮されている。
ただ関東のテレビでも、少しずつそんな彼らの姿が見られるようになってきた。少し前のことになるが、『KinKi Kidsのブンブブーン』(フジテレビ系)に神山智洋がソロ出演、同じ関西出身の大先輩KinKi Kidsに食レポを無茶ぶりされ、頑張ってやりはしたもののそれをまたツッコまれたりと散々いじられていたが、それでもまったくめげていない姿が彼ららしいへこたれない前向きさを感じさせた。
他にもすでに今年4月から中間淳太と桐山照史が昼の情報番組『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)の木曜レギュラーとなって、さまざまなロケやコーナーを任されるようになっている。これから彼らの持ち味であるポジティブで快活な魅力が、より多くの視聴者に知られるようになっていくことを期待したい。
Hey! Say! JUMPとジャニーズWESTは、冒頭にもふれたように大人数グループという点でも共通する。
そうした大人数グループとしての彼らの出発点は、昭和の終わりから平成の初めにかけて大ブームを巻き起こした光GENJIであるといえるだろう。たとえば、光GENJIの3枚目のアルバムタイトルが『Hey! Say!』(1989年)であり、それはそのままHey! Say! JUMPの前身ともなる期間限定ユニット・Hey! Say! 7(現在は山田・知念・中島・岡本によるグループ内ユニット)のデビュー曲のタイトルにもなった。
またJUMPは「Johnny’s Ultra Music Power」の頭文字を組み合わせたものであり、そこには「ジャニーズ」が入っている。つまり、Hey! Say! JUMPとジャニーズWESTには、ともにグループ名に「ジャニーズ」が入っているという共通点もある。そしてそこに、ジャニーズの元祖グループであるジャニーズとのつながりを見て取ることも可能だろう。
そうした意味で、この2つのグループは、昭和から平成へと続いてきたジャニーズ事務所のスピリットを受け継ぎつつ、「これから」のジャニーズを担うポジションに立っている。グループの個性としても対照的なところのある両者が、それぞれどのような道を切り開いていくのか注目したい。
■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『中居正広という生き方』、『社会は笑う・増補版』(以上、青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。