嵐の新作は“ポスト・SMAP”ジャニーズの王道だ! 矢野利裕『Are You Happy?』レビュー

 一方、例によって相葉ちゃんは、「Amore」(長友を受けてなのか)で謎の孤軍奮闘をしている。この曲は、昔の歌謡曲のラテン感をパロディ的に打ち出しており、結果的にサザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」の現代版のようになった、面白い曲である(サザンオールスターズというバンド名は、NYサルサバンドのファニア・オールスターズから取られている)。大野智によるバキバキなエレクトロ「Bad boy」も意欲的だが、同じエレクトロで言えば、新機軸はむしろ、二宮和也による「また今日と同じ明日が来る」のほうだろう。この曲は、音響/エレクトロニカ的なサウンドテクスチャーのトラックを見事に歌モノに昇華している。同じように「WONDER-LOVE」も、こちらはR&B由来だろうとは言え、やはりエレクトロニカ的なテクスチャーが持ち込まれている。繊細なトラックに対応する歌唱力もある。このあたりの要素が、ディスコティックなエレクトロハウスと結びつく可能性もあるだろうか。そしたら、いよいよクラブミュージック時代の華やかなポップスではないか。

 SMAPの大きな歩みを経て、嵐がジャニーズの新たなる王道を示し始めている。場当たり的か知らんが、いま目のまえにある作品は、そのくらい堂々たる傑作だ。

■矢野利裕(やの・としひろ)
1983年、東京都生まれ。批評家、ライター、DJ、イラスト。東京学芸大学大学院修士課程修了。2014年「自分ならざる者を精一杯に生きる――町田康論」で第57回群像新人文学賞評論部門優秀作受賞。近著に『SMAPは終わらない 国民的グループが乗り越える「社会のしがらみ」 』(垣内出版)、共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸編『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)など。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる