トクマルシューゴ、デヴェンドラ・バンハート…芸術の秋に聴きたい、アートの香り高い新作5選

 そのデヴェンドラがラブコールを送るのが、スウェーデンのシンガー、サラ・アスブーリンによるソロ・ユニット、エル・ペロ・デル・マールだ。新作『ココロ』は日本や中国、タイなど、オリエンタルなカルチャーからインスパイアされたらもの。リヴァーブをきかせた透明感のあるトラックに、ふわりと浮かぶウィスパー・ボイス。そんな彼女本来のドリーミーなサウンドに、トライバルなビートやエキゾチックなフレーズを織り交ぜなてオリエンタル幻想を艶やかに紡ぎ出している。かつて彼女の音楽を「優雅で素晴らしい」と絶賛したデヴェンドラ。偶然にせよ、新作で同じようにオリエンタルなアプローチをしていると知ったら惚れ直すに違いない。

 最後は文学の香り高い一枚を。ルー・リードも一目置いた、文学性の高い歌詞を書くシンガー・ソングライターのウィル・シェフによるソロ・ユニット、オッカーヴィル・リヴァーによる3年振りの新作『アウェイ』。前作以降、大好きだった祖父が亡くなったり、バンド・メンバーが脱退したりと落ち込むことが続いていたとか。そんな不運から逃れるように、シェフは町外れの家を借りて曲作りに没頭。そうすると、どんどん曲が生まれて、あっという間にアルバムが出来上がったらしい。新たなバンド・メンバーにはジャズやアバンギャルド・シーンで活動するミュージシャンを招くことで自由度の高いバンド・アンサンブルになり、そこにオーケストラ・アレンジも加わって、内省的でふくよかなサウンドスケープを生み出している。そんななか、呟くように歌うシェフのストーリーテラーぶりも健在だ。本人いわく「人生をリセットしてゼロからスタートするアルバム」らしいが、じっくり歌詞を読みながらシェフの新たな決意に耳を傾けたい。

■村尾泰郎
ロック/映画ライター。『ミュージック・マガジン』『CDジャーナル』『CULÉL』『OCEANS』などで音楽や映画について執筆中。『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』『はじまりのうた』『アメリカン・ハッスル』など映画パンフレットにも寄稿。監修を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック 1978-1999』(シンコーミュージック)などがある。

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