miwaの楽曲は「ハッとする仕掛け」がポイント? 各楽曲を分析してみた

miwa『君に出会えたから-short ver.-』

 2014年7月にリリースされた14枚目のシングル「君に出会えたから」は、キーがGで、イントロは<G- GaugonD#- Em- F- Cadd9- GonB- Am- Dsus4/ D>。サビは、前半が<G- GaugonD#- Em- F- Cadd9- GonB- C- D7/B7onD#、後半がEm- EmMaj7onD#- Em7onD- C#m7(-5)- C- D7- G- G>。ここでもサスフォーやアドナインスによる浮遊感と、経過音的に用いられたオーギュメントやマイナーフラットファイブの不安定な響きがフックとなっている。

miwa『Princess』

 最後に、ニューシングルから「Princess」を聴いてみよう。この曲は、サスフォー、アドナインス、そしてマイナーフラットファイブと、多くの仕掛けが曲中で効果的に用いられフックとなっている。キーはDで、イントロ、Aメロは<D- D- GMaj7- GMaj7- Em7(-5)- A- D- D>。Bメロ、サビは基本的にオーソドックスなダイアトニックコードを用いているが、Bメロの後半<GMaj7/ A- F#m/ Bm- B♭- C/ DのB♭>にハッとさせられる。ちなみにBメロの「IV- V- Em- VIm」というコード進行は、サザンオールスターズの「TSUNAMI」やケツメイシ「さくら」、平井堅「瞳をとじて」などでも用いられているJポップの黄金律。亀田誠治は、テレビ番組『亀田音楽専門学校 SEASON 2』の中でこれを、「小悪魔コード進行」と名付けている(コチラも参照 http://realsound.jp/2014/11/post-1712.html)。また、後半のサビは「chAngE」と同じように半音上、つまりD♭へ移調し曲を盛り上げる。言って見れば「ベタ」な手法なのだが、miwaの素朴で透明感あふれる歌声にかかると、まったく嫌味に聞こえない。

 この曲「Princess」はマンドリンやペダルスティール、ハンドクラップを用いたカントリー風のアレンジが心地よいが、これはmiwaをデビュー時からずっと手がけてきたアレンジャー/プロデューサー、NAOKI-Tの手腕によるところが大きい。彼の幅広い音楽的知識に裏打ちされたアレンジ能力が、miwaの楽曲を鮮やかに彩ってきたのである。

 もちろん、最初に述べたように「アコギ1本でも通用するシンプルかつ力強いメロディ」こそが、miwaの音楽性の真髄。あらゆる世代を虜にする楽曲を、今後も作り続けてくれることだろう。

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。

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