氷室京介『LAST GIGS』は“感謝のステージ”だったーーふくりゅうの総括レポート

氷室京介、『LAST GIGS』レポート

160529_hi_2.jpeg

 

 今回の東京ドーム公演は、3日間で販売された16万5000枚のチケットに対し、40万件以上の応募があったという。ソロ・アーティスト史上初の、東京ドーム公演を通算14回(※BOØWY時代含む)成功させた圧倒的なパワーの源とは何だったのだろうか?

 あらためて氷室京介の魅力について分析してみよう。

 ひと目見るだけで他を圧倒する、唯一無二のステージ・パフォーミングと、繊細さとワイルドさを兼ね備えたボーカル力の高さ。ビートロックを基調としながら、様々なミュージシャンとコラボレーションすることで生まれる、気品あるロックサウンドのグラマラスなオリジナリティ。カチっと決めこみすぎない粋な着崩し感覚を持つ発声から生まれる絶妙なグルーブ感。わかりやすさ一辺倒のポップソングや発声方法とは一線を画しながら、どんなマニアックなアプローチにもポピュラリティーを与えてしまう、巧すぎる歌唱が誘発する天性のポップさ。“誰にも似たくない、どこにも属さない”とは、BOØWYのキャッチコピーだったが、BOØWY以上のセールス、ツアー規模を更新し続けながらも、信念を貫き通し、バンドの再結成の道を選ぶことのなかった究極とも言える自己との闘い。

 B’z、BUCK-TICK、ゆず、GLAY、T.M.Revolution、氣志團など、後の日本ロックシーンに与えた影響も大きかった。氷室京介以前と以降で音楽シーンには大きな変化が起きている。それこそが、氷室京介=キング・オブ・ロックと呼ばれる所以なのだろう。

 1988年、東京ドーム『LAST GIGS』でのBOØWY解散後、氷室京介のソロ活動の歴史は、自分自身との、そしてBOØWYとの闘いだった。しかし、1993年にリリースした4thアルバム『Memories Of Blue』で、BOØWYの売り上げ枚数を上回ったことによって“成功を感じられた”と述べられていたことが興味深い。

 ポピュラリティーの高い1988年にリリースした1stソロアルバム『FLOWERS for ALGERNON』、コンセプチュアルな1989年の『NEO FASCIO』、バンドサウンド回帰となった1991年の『Higher Self』、最もセールスを記録した1993年の『Memories Of Blue』、難産となった1994年の『SHAKE THE FAKE』、レコード会社の移籍を機に突き抜けた1996年の『MISSING PIECE』という名作ばかりの初期アルバム作品たち。

 その後は、さらなる自分との闘いに向けてLAへ生活と制作の場を移し、スティーヴ・スティーヴンスと共に作り上げた最高傑作と名高い1997年の『I・DE・A』、2000年にはバラードがテーマな『MELLOW』と、より成熟を感じさせる『beat haze odyssey』を発表、2003年にはヘヴィかつポップな『Follow the wind』、2006年にはハードで刺激的な『IN THE MOOD』、2010年には現時点での最新作となった『"B"ORDERLESS』を生み出すなど、クリエイティブにこだわった氷室京介らしさを追求しつづけた35年のキャリアだ。

 日本ロックシーンの礎を築き、数々の名曲と伝説、そして多くのフォロワーを生んだキング・オブ・ロック=氷室京介。全身全霊のパフォーマンスによって、最後のライブというオーディエンスの空虚感を吹き飛ばしたスター性ある圧倒的才能。最後のライブといえ、決して御涙頂戴のステージにはならなかった音楽が解き放つ多幸感。それは、氷室京介はきっとまたステージに帰ってくるに違いないという、希望さえ感じさせてくれた完璧なまでに氷室京介のステージだった。少なくとも筆者は、いわゆる“氷室ロス”と呼ばれる喪失感を感じてはいない。MCで、氷室自身が音楽制作を続けていきたいと話していたことに希望を見出したいと思う。

160529_hi_3.jpeg

 

(文=ふくりゅう(音楽コンシェルジュ/Twitter))

■5月23日 KYOSUKE HIMURO LAST GIGS セットリスト
1.DREAMIN’
2.RUNAWAY TRAIN
3.BLUE VACATION
4.TO THE HIGHWAY
5.BABY ACTION
6.ROUGE OF GRAY
7.WELCOME TO THE TWILIGHT
8.MISS MYSTERY LADY
9.“16”
10.IF YOU WANT
11.LOVER’S DAY
12.CLOUDY HEART
13.LOVE & GAME
14.PARACHUTE
15.BANG THE BEAT
16.WARRIORS
17.NATIVE STRANGER
18.ONLY YOU
19.RENDEZ-VOUZ
20.BEAT SWEET
21.PLASTIC BOMB
22.WILD AT NIGHT
23.WILD ROMANCE
24.ANGEL
Encore-1
25.The Sun Also Rises
26.魂を抱いてくれ
27.IN THE NUDE
28.JELOUSYを眠らせて
29.NO.N.Y.
Encore-2
30.VIRGIN BEAT
31.KISS ME
32.ROXY
33.SUMMER GAME
Encore-3
34.SEX&CLASH&ROCK’N’ROLL
35.B・BLUE

■KYOSUKE HIMURO LAST GIGS公演概要
4月23日(土) 京セラドーム大阪
4月24日(日) 京セラドーム大阪
4月29日(金) ナゴヤドーム
5月14日(土) 福岡ヤフオクドーム
5月21日(土) 東京ドーム
5月22日(日) 東京ドーム
5月23日(月) 東京ドーム

■氷室京介×WOWOW“LAST GIGS”スペシャルコラボレーション放送日程
http://www.wowow.co.jp/music/himuro/
6月4日(土)夜8:30[WOWOWプライム] ※無料放送
「氷室京介 WOWOW SPECIAL ~PROLOGUE OF LAST GIGS~」

6月26日(日)夜8:00[WOWOWプライム]
「氷室京介 WOWOW SPECIAL ~DOCUMENT OF LAST GIGS~」

7月23日(土)夜8:00[WOWOWプライム]
「氷室京介 WOWOW SPECIAL ~LAST GIGS AT TOKYO DOME~」

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる