メジャー1stシングル『Morning Glow』インタビュー

SHE'S 井上竜馬、メジャーへの決意を語る「“ピアノロック”というワードのアイコンになりたい」

「誰かが新しい音楽に触れるきっかけになれたら」

 

――SHE’Sの曲って驚くほど踏みしめるようなスケールの大きい曲が多いじゃないですか。メンバーにどうバンドの方向性を説明したんですか?

井上:まずは参考音源を聴かせるとかではなく、ストレートに「ピアノ入ってるロックやりたいねん」と。でも最初はみんなわからなかったんです。「え? ピアノ入ってるロック? 例えば?」「例えば、じゃあメイって知ってる?」「知らん」。……これは、どうしようかと。で、たまたまその時一番近いイメージとして、シンプル・プランのセルフタイトルのアルバムが、ポップパンクでロックサウンドやけどピアノが入ってて美しいなぁと思ってたんで、それを聴かせたりしましたね。

――自分のやりたいことを明確に伝えないとバンドとしてスタイルが確立できない?

井上:そうですね(笑)。でも、みんな大学行って就職するつもりやったし、結構ラフに始まりはしたんです。「面白そうやん、やろか」ぐらいの。でも大学は1年行って、2年の時に辞めました。結局、SHE’Sがやりたいんやったら高いお金を払ってもらって卒業するのは違うんちゃうかな? と思って。「お金返すから辞めさせてくれ」と親に頭下げて、辞めさせてもらいました。

――何かきっかけが?

井上:大学をやめた年にちょうど「閃光ライオット」で決勝に残ったり、いいタイミングやったんかな? と、今になったら思います。

――2012年ですね。その時のバンドのテンションはどうだったんですか?

井上:2011年は組んで1年目で。すぐデモ音源を「閃光ライオット」に面白半分で送って。でもその時は二次審査、スタジオライブで落ちたんですけど、「まぁ、そりゃそうやな」と。で、その次の年の2012年は応募する気はなかったんですけど、大阪のライブをソニーの人が見にきて「閃光ライオットに応募しない?」と声をかけられたのがきっかけで。結局、決勝まで行って。メンバーの意識が全員、クッと音楽に傾いたというか。結構大きなきっかけやったんじゃないかなと思います。

――そこからバンドに本腰を入れたものの…。

井上:トントン拍子ではなかったですね(笑)。それから別に何があるわけでもなく、自主制作でCD作って、自分らでツアー組んでやってましたね。でも、自分たちで活動をするにあたって、初めてライブハウスに連絡とって、対バンも探してもらって。で、突然日程が変わったりして、ホテルももちろん取れないんで、車中泊4泊してライブとか(笑)。でも自分たちで全部やるっていう精神を培えたのは、あの時期があってこそなのでいい経験をしたと思います。

――ミニアルバム3枚でもどんどん変わって行きましたね。

井上:客観的に見ると、面白いぐらい変わっていきましたね。1枚目の『WHO IS SHE?』は迷いながらでもあったし、演奏や編曲に変に凝ろうとしてた時期なので時間もかかりました。でも2枚目の『WHERE IS SHE?』以降は余計なものは取っ払っていくという志向に変わって、曲作りがスムーズになったことが大きいですね。特に、歌いたい内容が変わったとか、対象が変わったというのは大きな要素ではあると思います。最初の『WHO IS SHE?』は、特定の忘れられない女の人という相手がいて、その人に対して歌ってる歌が多かったんで、歌詞を書く上でそんなに苦労はなかったんです。でも、2枚目以降は対象が目の前の人達や自分に変わったので、そこからかなり語感に加えて意味もつけていくようになったので、すごい丁寧な作業にはなりましたね。

――対象が目の前のお客さんや自分に変化していったきっかけというのは?

井上:うーん、変わらないといけないなと思ったのがきっかけというか。「忘れたくない」っていう意地があるから歌ってたんやと思うんですけど、そこから一歩進まないとなぁっていう風に思ったら、じゃあどこに行こう? と、自分ともう一回向き合う機会ができて。お客さんもちょっとずつ増えて、ワンマンもできて……という風になると、ちゃんと伝えないといけない相手っていうのは目の前の人達でしかない。自然と一個ずつほどいていくような感覚ではありました。それがより強固になったのが3枚目の『she’ll be fine』だったんですね。

――SHE’Sの楽曲って例えば「Un-science」とか、ど直球にコールドプレイみたいな匂いがして。日本人だったらちょっと照れてひねるでしょ? ってところが感じられなかったのが衝撃で。

井上:(笑)。むしろ邦楽ロックとかギターロックとかと同じことをしたくないっていうひねくれ方なんです。その意識はたぶん一生曲げないと思いますし、そういう曲書いてって言われても、絶対洋楽っぽくアレンジすると思います。それが好きっていうのが一番大きいんですけど、日本の音楽シーンやったら今までのレールに沿ったものが受けるの分かってるし、日本人が好きな音楽がそうやって愛されてきてるんやから「いい」って判断されるのはもちろん分かってるんですけど、そこ以外で自分たちが大好きなものが認められたら最高じゃない? と思ってやってるので。それができなくなったら僕らが音楽する必要ないですし、曲げるところではないと思ってます。

――今、世界のメインストリームと比べると日本のシーンは独自の流行があるじゃないですか?

井上:それはめっちゃ思いますね。特に日本人の洋楽離れは切実に感じるというか。バンドマンと喋ってても、「こんなに洋楽聴かへん人がいっぱいおんねや」と。「あ、洋楽か、オアシスとかシガー・ロスなら知ってる」という人がとても多くて、「マジか」と。僕もたぶん、日本のバンドシーンのバンドマンに比べたら邦楽ロックを全然知らないんですけど、でも一応、何が受け入れられてるとか、売れてる理由っていうのは絶対あるから、聴くようにしていて。でもやっぱり洋楽聴いてる人は少ないので、僕らは自分たちのサウンドでやり続けたいというか、これでもう一回、いろんな人が洋楽聴くようになってくれたら嬉しいし。THE BAWDIESのROYさんとかもそういう感覚だと思うんですよ。毎日オススメの洋楽のYouTubeリンクをツイッターに貼ったりしてますよね(笑)。なんかいいなぁと思うんですよね、そういうの。誰かが新しい音楽に触れるきっかけを渡せたらなと僕も思ってます。

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