LAMP IN TERREN、HOWL BE QUIET、SHE'S “歌”でつながる同世代バンドが生んだもの

SHE'S、ハウル、テレン3マンレポ

 LAMP IN TERREN、HOWL BE QUIET、SHE'Sによる対バンツアー『One-Two-Three, For!! TOUR』が、2015年に好評を博した3カ所からスケールアップして、2016年は6カ所公演を実現した。ここで、ファイナルである東京公演を通して見えてきたものを記しておきたい。

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 今回出演したバンドメンバーは1991年〜93年生まれの同世代。共通項としてはどのバンドも歌を大事にして、演奏やアレンジも歌によって駆動している印象が強い。そしてSHE'Sも6月8日リリースのシングル『Morning Glow』でメジャーデビューすることが発表され、めでたく3バンドともメジャー・フィールドに居並ぶ状況になったのが、今年の対バンツアーの新たな局面である。YOUTH WAVEと称されるバンドの多くが、よりオルタナティブな音楽性を志向する一方、より多くのリスナーにリーチしようとするメジャー志向な彼らのようなバンドが、新しい時代のポップを鳴らしていることが興味深い。HOWL BE QUIETとSHE'Sはピアノロックという共通点があり、LAMP IN TERRENも含めると、3バンドともフロントマンであり、ソングライターであるボーカリストがバンドのカラーを決定しているところも共通点だろう。そこにジャンル的な共通項は特にない。そこがむしろ新しい。そして、フロアのファンも飽くまで曲を傾聴し、感情が盛り上がれば手を挙げるという、音楽に素直なリアクションにも新しいものを感じた。

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アンコール最後には、出演バンド全員によるセッションも

 加えて、同じメンツでツアーを廻ってきた中でバンド同士の間で培われた“仲間意識”と“ライバル心”は、ファンにとっても彼らの成長物語を追う楽しみが付加要素となっていたのではないだろうか。ツイッターで逐一、進行中のツアーを追い、各地のライブで起こったことやMCなどなどが、リアルなライブの場における参加意識と一体感を増幅させる装置として機能していることも実感できたからだ。それはもちろん、ワンマンライブでも味わえることなのだが、推しメンならぬ、推しバンドの誰かと他のバンドの関係や仲の良さを目の当たりにすることで、より彼らがなぜこの対バンツアーを開催しているかを身近に感じ取ることができる。それはブレイクを前にしたバンドを追うファン冥利に尽きるところがあるはずで、そこはアイドルもバンドも心理的には同じだろう。

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SHE'S

 どのバンドも主役になりうるこの日のトップバッターは、先日の渋谷CLUB QUATTROワンマンも盛況で、俄然注目度急上昇のSHE'S。彼らの代名詞になった井上竜馬(Vo、Pf、Gt)のピアノフレーズと伸びやかなボーカル、踏みしめるように刻まれるタフなビートの「Un-science」の浸透度に驚く。ファンにはおなじみのスタイルだが、ボーカル&ピアノでフロアに向かって正面を向く井上のスタイルは、それこそギタ女ならぬ、ピアノ男子的なトレンドさえ生むんじゃないか? と思わせるキャッチーさがある。もちろん、バンドアンサンブルのスケールや曲のクオリティありきなのだが……。MCでは昨年のツアーに来たオーディエンスと、今回初めてSHE'Sを見るオーディエンスに挙手させ、その増加を目の当たりにした。演奏とは一変、関西人らしさ全開で、このツアーで定着した高速で「ワン、ツー、スリー、フォー」にファンが「イェー!」と返すコール&レスポンスを、無茶なスピードで展開し、場を笑いに包む場面も。ラストにはさらに大きなフィールドへ照準を合わせるような「遠くまで」を披露。サビのシンガロングがごく自然に起こり、初見のオーディエンスもろともタイトル通りもっと遠くへこのバンドがリスナーを連れて旅立つことを明確に印象づけた。

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HOWL BE QUIET

 続いて登場したのは3月にシングル『MONSTER WORLD』でメジャーデビューを果たしたHOWL BE QUIET。バンドというスタイルに拘泥することなく、ピアノロックの透明感やアイドルがエンタメに徹する姿勢を融合するという、オルタナティヴなスタンスを選択した今の彼らに迷いはなかった。竹縄航太(Vo、Pf、Gt)もピアノ&ボーカルだが、ハンドマイクでお立ち台からフロアを煽り、軽やかにステップを踏むスタイルは、オーディエンスも自然に身体を揺らしたくなるエンタメ精神にあふれたもの。特にシンセポップ調の「ライブオアライブ」などは、USインディ以降のポップネスも感じさせ、今のスタンダード感さえある。そして対バンツアーならではの楽しさはやはりMCタイムに……。ドラムの岩野亨が、先ほどのSHE’S井上のMCに「自分のものにしやがって!」と、自身の発案を強調。さらなる高速コール&レスポンスで勝負に出るという場面に体育会系マインドを見て笑ってしまった。「MONSTER WORLD」を含めアッパーに盛り上げた後半だったが、ラストにはじっくり聴かせるバラード「A.I.」をセットしたことも、『One-Two-Three,For!! TOUR』らしい展開だと見た。

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