三代目 J Soul Brothersが果たした「挑戦」と「継承」 柴那典が新アルバム全曲を徹底分析

M12. Born in the EXILE

三代目 J Soul Brothers / ドキュメンタリー映画「Born in the EXILE」 (2016.2.12〜全国ロードショー)特報 long ver.

作詞:RYUJI IMAICHI, HIROOMI TOSAKA、作曲:T-SK, MoonChild

 今市隆二と登坂広臣が作詞を手掛けたドキュメンタリー映画『Born in the EXILE ~三代目 J Soul Brothersの奇跡~』主題歌。オーセンティックなR&Bバラードで、「starting over」と同じく、こちらも歌詞がポイントだろう。一般的には、こういったタイプの楽曲では色恋をテーマにしたものが多いのだが、この曲はファンへの思いを込めて書かれたという。それが「感謝」と「自己実現」のストーリーになっている。二人のハーモニーで「愛をありがとう 夢をありがとう」「綺麗に輝いてる 未来を信じて進んだ」と歌われる。夢や希望という大振りなテーマを、メタファを使わずに、そのままの言葉で記す。

 そのピュアネスをストレートに感動的と捉えられるかどうかが、ファンダムの内側と外側を隔てる壁になっていそうな気がする。

M13.銀河鉄道999(三代目 J Soul Brothers ver.)

作詞:奈良橋陽子、山川啓介、作曲:タケカワユキヒデ、編曲:Maozon for Digz, Inc. Group

 ボーナストラック的におさめられたのは、ゴダイゴ「銀河鉄道999」のカバー。「三代目 J Soul Brothers ver.」となっているのは、過去にEXILEがやはりこの曲をカバーしていることを踏まえてのネーミングだろう。編曲はSTYと共に「R.Y.U.S.E.I.」を手掛けブレイクの立役者となったMaozonだ。

 こうして全13曲を聴くと、改めて、アルバムは「挑戦」と「継承」のバランスから成り立っていることがわかる。前者は、海外のブラック・ミュージックやダンス・ミュージックの最先端の音楽ジャンルをJ-POP化する試み。後者はいまやEXILEファミリーの若頭的な位置を担う今の三代目JSBが、先達から続く物語性を引き継ぐという試み。いわば「攻め」と「守り」とも言える。

 グループ自体にとりたてて思い入れがあるわけではない筆者としては、前者の音楽的挑戦はとても興味深く思える一方で、後者が象徴する体育会系的な上下関係を元にした世界観には距離をとってしまうのが正直なところ。とは言えLDHの長期的な戦略を考えると、きっとこの先「四代目」「五代目」と続くであろうJSBのストーリーにおけるブランディングはとても巧みだと思う。

 ともあれ、「挑戦」も「継承」も、どちらもトップスターとなった今の彼らだからこそ背負える役割なのは間違いないはずだ。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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