「大器晩成」が圧倒的な強さを見せた2015年 ハロプロ楽曲大賞を振り返る

楽曲部門4~10位

Berryz工房「Love together!」

 モーニング娘。'15は「今すぐ飛び込む勇気」(4位)と「スカッとMy Heart」(6位)、アンジュルムは「臥薪嘗胆」(7位)と「ドンデンガエシ」(10位)、Juice=Juiceは「CHOICE & CHANCE」(8位)と「生まれたてのBaby Love」(9位)といった人気楽曲が並ぶが、そんな中で5位にランクインしたのがBerryz工房「Love together!」だった。2015年3月3日の日本武道館ライブをもって無期限活動休止となった同グループの最後のオリジナル曲である。やはりこの曲は、武道館でのアンコールで披露されたピアノ伴奏バージョンの印象がとても強い。ハロプロ史に残る名場面であった。

楽曲部門11~50位

 以下はグループ別に見ていこう。

℃-ute

℃-ute「我武者LIFE」

 グループ最高位は「我武者LIFE」の18位。ここ数年の傾向なのだが、℃-uteはハロプロ楽曲大賞ではいまひとつ弱い。2013~2014年と同じく、今回の2015年もまたベスト10に楽曲を送りこむことができなかった(2012年最高位は「悲しきヘブン」の4位)。公式サイトのプロフィールページなどからうかがえるハロプロ内序列では2015年度からモーニング娘。を抜いて一番上となり、昨年6月11日には結成10週年記念の横浜アリーナ単独公演を成功させるほどのポテンシャルがあるグループなのにもかかわらず、楽曲大賞では弱いというのは興味深い現象だ。

 ここからは、単純に自分の好きなグループやメンバーの楽曲に票を投じるという、いわゆる「人気投票」にハロプロ楽曲大賞が陥ってないという現状が読み取れる。個々に好きなグループやメンバーはいたとしても、それはそれとして、あくまで自分の好きな「楽曲」に投票し、その集積が楽曲大賞の総順位となっている。これは「入口は一個のグループでも、ヲタを続けていく内に他のグループも好きになっていくというハロプロの特性(DD誘発性とでもいおうか)」、さらに「1人5曲に投票できる(つまり1グループ1曲というバラけた投票行動がしやすい)システム上の特徴」といった要素によるところも大きいのではないか、と常々考えている。

 つまりグループの人気力はあまり関係なく、楽曲が支持されさえすれば上位に行くことができるというのは、楽曲大賞の過去の結果が証明している。そんなランキングの中での℃-ute楽曲はここ数年あまり振るってないが、はたして今年以降はどうなるか。昨年12月発売なので楽曲大賞のレギュレーションとしては今年のノミネートとなるアルバム『℃maj9』の収録曲、とりわけ「アイアンハート」は力を持っている楽曲だと個人的には感じている。

モーニング娘。'15

モーニング娘。'15「今すぐ飛び込む勇気」

 ハロプロ楽曲の人気ジャンルであるファンキーなディスコサウンドをまとった「スカッとMy Heart」が6位という上位に来たのは納得なのだが、その上を行きグループ最高位となったのが4位の「今すぐ飛び込む勇気」というのは個人的に少し意外だった。泰誠ことたいせい作曲、浜田ピエール裕介編曲によるこの曲は、奇のてらったところのない、ただただ美しいメロディー・歌詞・サウンドというオーソドックスな曲調。新しい旅立ちを、飛び立つ水鳥の姿に託した歌詞世界は、2015年いっぱいでグループを卒業した鞘師里保の姿と重ね合わせて聴いたファンも多かったようだ。

 この曲や「夕暮れは雨上がり」(19位)で試みられた叙情的かつポジティブなサウンド路線は、昨年12月リリースの「冷たい風と片思い」「ENDLESS SKY」でも継続されている。こちらも今年度のノミネートとなり、どこまで順位を伸ばすか楽しみだ。

 また、前回2014年度のランキングではミュージカル『リリウム』の楽曲が多数ランクインしていたのが特徴のひとつだったが、2015年度にはモーニング娘。'15主演ミュージカル『トライアングル』のオリジナル楽曲が50位内に3曲入ってきた。最高位は鞘師里保演じるキリが歌うバラード「触れればココロがあふれだす」(41位)だった。

アンジュルム

 2015年のアンジュルムが凄かったのは、1位曲を獲得したからという点だけではない。シングル曲は全部で8曲ノミネートされていたのだが、企画カバー曲である「魔法使いサリー」(72位)をのぞく7曲すべてが40位より上にランクインという高い支持を得たのだ。また、11月発売のアルバム『S/mileage / ANGERME SELECTION ALBUM「大器晩成」』収録新曲からも3曲がやはり40位以上にランクイン。福田花音の卒業ライブとなった11月29日の日本武道館ライブでも印象的な場面で披露された「友よ」(24位)、「交差点」(40位)が入ってきたのは見事だが、さらに特筆すべきは、まだライブ披露もされていない「カクゴして!」という楽曲が38位をマークしたことだ。

 この「カクゴして!」は、アルバム初回Aのみ収録で、作詞作曲はTHE☆FUNKS、編曲はDANCE☆MAN。THE☆FUNKSとはDANCE☆MANと安岡優(ゴスペラーズ)による覆面ユニットで、この作家陣からもうかがえるようにファンキーなディスコサウンドが展開されている。鈴木俊介編曲によるハロプロファンクとはまた一味違ったファンクサウンドと、アンジュルムメンバーのバイタリティあふれるボーカル表現が上手く組み合わさった隠れ良曲である。こういった楽曲がちゃんとランクインしてくるところに楽曲大賞の意義を感じる。

Juice=Juice

Juice=Juice「CHOICE & CHANCE」

 J=Jの2015年ランキングの焦点は、オリコン週間チャートで1位を獲得した記念曲「Wonderful World」が楽曲大賞では何位か、そして名盤の誉れ高い1stアルバム『First Squeeze!』収録曲がどれぐらいランクインするか、の二点だろう。前者の結果は14位で、なかなかの高順位といえる。そしてDISC2収録のアルバム用新曲は全部で9曲あったのだが、内7曲が50位以内にランクインという高い頻度となった。

 シングル/アルバム曲含めて、グループ最高位の支持を集めたのは8位の「CHOICE & CHANCE」。アップテンポで勢いのある曲調は、アルバム中でもエース級の存在感を放っていた。将棋を指すシーンもあるシュールな映像のMVも面白い仕上がりだった。

 DISC3収録のカバー集からは「Magic of Love (J=J 2015 Ver.)」が35位を記録。個人的にはこの曲が2015年で最も高まる1曲だと思っており、自分の投票でも1位にした。

カントリー・ガールズ

 「愛おしくってごめんね」の両A面だった「恋泥棒」は22位、2ndシングル「わかっているのにごめんね」は33位とまずまずの順位。「ためらい サマータイム」は地味な曲調ということもあり62位に留まった。

こぶしファクトリー

 ミュージカル主題歌ということで、他グループのファンへの知名度という点ではちょっと厳しいと思われた「サバイバー」こそ85位だったが、「念には念」と共にトリプルA面シングルとして発表された「ドスコイ! ケンキョにダイタン」「ラーメン大好き小泉さんの唄」は、それぞれ12位・23位と高評価。

 つい数日前にラジオで初オンエアされたニューシングルの内の1曲「チョット愚直に! 猪突猛進」は、作詞作曲をヒャダインこと前山田健一が手がけるということで年始から話題を呼んでいたが、その仕上がりは鈴木俊介を編曲に迎えての前山田×鈴木による新たなハロプロファンクとなっており、すでに高い評判を集めている。2016年度の楽曲大賞でも上位にランクインしてくるのはほぼ間違いないだろう。

つばきファクトリー

 こぶしファクトリーと同じく2015年にグループ結成されたが、メジャーデビューはまだというつばき。インディーズ1stシングル「青春まんまんなか!」は54位と、惜しくもトップ50入りを逃してしまった。すでにインディーズ2ndシングル「気高く咲き誇れ!」がリリースされているが、2016年はいつメジャーデビューが決まるのかというのが、つばきにとって最大の関心事だろう。

ハロプロ研修生

 Juice=Juice『First Squeeze!』と同じく、リリース当初から高い評価を得ていたのがハロプロ研修生のアルバム『① Let's say “Hello!”』(先行販売日は2014年11月29日、正式発売日は2015年2月18日なので2015年度のノミネートとなった)。ノミネート7曲中、「青春Beatは16」(53位)、「「アイドルはロボット」って昭和の話ね」(80位)以外の5曲がトップ50入りを果たした。正規グループの楽曲に混じってのこの成績は大健闘といえる。

 最高位は「「恋したい新党」」の21位。thugい雰囲気のトラック、ハロプロ楽曲ではおなじみのU.M.E.D.Y.のラップ並唱、研修生たちの曇りのないユニゾンといった組み合わせがなんとも絶妙なケミストリーを見せている。

ハロプロ関連

アップアップガールズ(仮)「アッパーレー (Official Lyric Video)」

 正規のハロプログループ以外のアップフロント所属ガールズグループ勢では、アップアップガールズ(仮)「アッパーレー」が32位で最高位だった。昨夏を彩ったお祭り感あふれるサマーアンセムで、アプガは7月に日比谷野音ワンマンライブを成功させるなど、2015年は躍進の年でもあった。

LoVendoЯ「いいんじゃない?」

 LoVendoЯ「いいんじゃない?」は43位。中島卓偉の作詞作曲によるメジャーデビュー曲で、2015年は日本有線大賞の新人賞を受賞するというトピックもあった。

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