香月孝史が『アンダーライブ4thシーズン』をレポート
乃木坂46が『アンダーライブ4thシーズン』で見せた、パフォーマンスの“懐の深さ”
アンダーライブでは、それぞれの時期において牽引役を務めるメンバーの継承もまた大きなストーリーになる。初期のアンダーメンバーを中心的に支えた伊藤万理華や齋藤飛鳥らが今年のアンダーライブからは去り、またフロントとバックを柔軟に移動しながらアンダーライブの支柱になってきた井上小百合も選抜メンバーとなったため、4thシーズンには参加しない。そんななか、彼女たちと同様にアンダーライブを引っ張ってきた中元日芽香が、センターを務めた3rdシーズンに続いて今回もグループを牽引した。井上らの抜けた現行メンバーを先導する中元はこれまで以上に頼もしく、アンダーメンバー内での主軸の継承が確かに行われていることがわかる。
もっとも、12thシングルのメンバー配置に基づく今回のアンダーライブでセンターに立つのは、「別れ際、もっと好きになる」のセンターポジションを務める堀未央奈だった。アンダーライブにとって、堀という存在はある種、異質である。シングルへの参加開始と同時にセンター抜擢というかたちで選抜入りし、11th『命は美しい』まで選抜に入り続けていた堀は、これまでアンダーライブの歴史に名を連ねることのなかった人物だ。選抜メンバーとしては独特の存在感を示してきた彼女だが、今回センターを務めたアンダーライブという場では他の誰よりも経験が浅い。アンダーライブのフロントにとって、こうしたパワーバランスはかつてなかったことだ。けれども、中元を中心としてアンダーを引っ張ってきたメンバーたちと堀とが、今回のライブでは予想以上に自然に溶け合っているようにみえた。それは、選抜メンバーへの対抗としてライブを得意とするアンダーが存在していた時期を経て、よりグループとして一体になることのできた今夏の全国ツアーの成果のひとつなのかもしれない。一方でアンダーライブを中心的に支えてきたメンバーたちのストーリーはありつつも、それとは関係なく、誰がどのポジションに入ろうとも違和感なくアンダーライブとしての統一感を見せることができる。今後もシーズンによって参加メンバーが移り変わっていくことが避けられないこの企画にとって、そうした柔軟性は不可欠だ。新たなバランスで挑んだ4thシーズンのアンダーライブは、そんな懐の深さをごく自然に見せていた。
12月に控える日本武道館でのアンダーライブに向けてのポジティブな材料は、このごく自然に獲得していた懐の深さなのだろう。昨年の有明コロシアムでのアンダーライブは、当時の研究生も含めてすべてのメンバーが楽曲のセンターを経験する「全員センター」が鮮やかな驚きを生み、それが今年のアンダーの一体感へとつながる機運を盛り上げた。今回はそうした水準がすでに当たり前のものになっているからこそ、また別の段階のさらなる驚きを期待したい。
■香月孝史(Twitter)
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。