柴 那典の新譜キュレーション 第1回
ザ・ウィークエンド、ラナ・デル・レイ、ミゲル……USチャートを席巻する「ダーク&メロウ」な5枚
リアルサウンドで「新譜キュレーション」のコーナーをはじめます。小野島大さん、岡村詩野さん、村尾泰郎さんなど、いろんな書き手がそれぞれの角度で深くシーンを掘っている連載コーナーですが、僕は基本的には海外のメインストリームの音楽シーンの動きについて語りたいなと思ってます。特にジャンルを絞らず、どんなものがヒットチャートの上位に顔を連ねているのか、その背景にはどんな動きがあるのか。そんなことをつらつらと考えていこうと思っています。
というわけで、第一回目の今回は「ダーク&メロウ」がキーワード。まず別格で素晴らしいのが、この人の新作です。ザ・ウィークエンド。一昨年のアルバム『KISS LAND』でもその官能的な歌声が大きな評価を集め、ソウルシンガーとして徐々に人気を高めてきた彼が、ニューアルバム『Beauty Behind The Madness』をリリース。これが大ヒットしている。すでに1stシングル「Can’t Feel My Face」は全米No.1となり、アルバムも初週1位が確実。2ndシングル「Tell Your Friend」もチャートを駆け上がっており、まさに「ザ・ウィークエンド旋風」が巻き起こっている状況。
ザ・ウィークエンドの最大の持ち味はヴォーカルのソウルフルな表現力にあるわけなんだけれど、今年に入って彼の状況を飛躍させたのは間違いなく映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のサントラに収録された「Earned It」という一曲。
これを聴いてもわかるように、彼の歌の最大の持ち味は「セクシーさ」と「闇」が交差するところにある。アルバムでも、色気と同時に、悲哀や陰鬱のテイストがにじみでている。特にエド・シーランをフィーチャーした「Dark Times」、ラナ・デル・レイをフィーチャーした「Prisoner」、そしてアルバムのラスト・トラック「Angel」という後半3曲の並びが最高。マイケル・ジャクソンを想起させる才気走った色気と、ポーティスヘッドの底なし沼のようなメランコリーが同居している。
そして、そのザ・ウィークエンド新作にも参加していたラナ・デル・レイは、4枚目のアルバム『Honeymoon』を9月18日にリリース。今は収録曲が徐々に公開されている段階だが、どれも彼女ならではの世界が満開になっている。「古きよきハリウッド」をこよなく愛する時代がかった美意識、愛しあうことと傷つけあうことが絡みあった悲劇的な世界観が見て取れる。先行シングル「High By The Beach」のスリリングな感触からしても、過去作を超えるものになるのは間違いなさそう。