『中居正広という生き方』著者・太田省一氏インタビュー
SMAP・中居正広はなぜテレビ界で「前例のないアイドル」となったか? 話題の研究本著者が解説
「『アイドルが続く』ということには、好きになってくれるファンの側の成熟もある」
――SMAPは30代、40代のアイドル像を示すことに成功しました。ジャニーズの後進グループもこの流れをつないでいけるでしょうか?
太田:社会がアイドルをどのように受け入れていくのかということに、相当左右されていくのではないでしょうか。SMAPはいろんな応援の仕方ができるグループですが、熱狂的に応援したい層、ある程度距離感を持って接するのが好きな層というように受け手が分化して、グループが細分化されていくかもしれない。グループという形がずっと当たり前に続いていくかどうかもわからないですよね。
――それこそ1980年代にはソロのアイドルが多かったわけですよね。
太田:ソロのアイドルが、プロジェクト次第でその時にだけ集まるという形態になるかもしれませんしね。SMAPがすごいのは、ユニットっぽいところがあるんですよね。極端に言えば、グループじゃなくてもいいんじゃないかと思わせるところがある。普段グループとしてSMAPを見るのって『SMAP×SMAP』や特番くらいで、多くの場合はメンバー個人として活動する姿を見てるわけじゃないですか。すでにグループと個人、どちらが主かわからないようになっている。その意味ではアイドルの未来像的な部分もあるのかもしれない。ただ、先ほど話したように、人間そのものを見せるという意味では、一人だときついのかもしれません。グループがあることによって救われている部分はあるんだろうと思います。スキャンダルはSMAPにもあったわけだけれど、グループがあるからこそ、そこに帰ってきて許されるという機能があったと思うので。
――人間そのものを好きになってもらう、というアイドルの性質がここでまた鍵になるわけですね。
太田:「アイドルが続く」ということには、好きになってくれるファンの側の成熟もあるんだろうと思います。アイドルとファンがある種の距離感を持って長く付き合える関係って可能なんだなと、SMAPを見ていると実感しやすい。そういう成熟が広がっていくことによって、アイドルの活動の仕方も変わっていくかもしれないですね。
――「アイドルを好きである」ことは未成熟な嗜好として語られることも多いけれども、「人格を好きになる」と考えれば、そう単純なことではない。
太田:かつては、アイドルは思春期と切り離せないものだったわけですよね。SMAPの存在は、それを超えたということでもあるわけです。「好き」のあり方だって多様ですから、もちろん疑似恋愛的に入れ込むことだってありうる。ただ、だからといって「アイドルは恋愛しちゃダメ」みたいに変な規範になってしまうようなことがなくなればいいんだろうと思います。どういうあり方であれ、好きだという感情がないとアイドルではありません。僕も中居くんが好きだから『中居正広という生き方』という本を書いたわけですからね。
(取材・文=香月孝史)