高橋優が5年間の活動を振り返る「ずっと“笑う約束”をいろんな人たちと交わそうとしてきた」

「社会的な服を脱ぐタイミングでこの曲を聴いてほしい」

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--そしてDISC2のラストに収めた新曲「おかえり」。これは本当にいい曲。大好きです。

高橋:ありがとうございます。これもドラマ(『明日もきっと、おいしいご飯~銀のスプーン~』)の台本をいただいて、書かせていただいた曲ではあるんですけど。僕は最近、「旅人」とかいろんな曲で歌わんとしていたことの一つに、“帰る場所”というテーマがあって。僕の偏った考え方ですけど、人はなぜ学校に入り、就職し、働いてお金を稼ぎ、恋愛して結婚して子供を育てることを、なぜこれほどまでに頑張ってやっているのか?と考えた時に、もしかしたら、誰かにとっての帰る場所を築こうとしてるのかな?と思った時があるんですよ。

--帰る場所、ですか。

高橋:お父さんとお母さんは、自分にとっての帰る場所じゃないですか。そのお父さんとお母さんも、最初からお父さんお母さんだったわけじゃなくて、結婚して自分を生んで、帰る場所になってくれたわけじゃないですか。今を生きている僕らも、やがて誰かにとっての帰る場所になっていくんじゃないか?と。それがこの曲のヒントになったのと、あと一つは、東京の街を歩いていて、たとえば渋谷の人混みの中で、小学校5~6年生ぐらいの男の子たちが、コンビニのサンドイッチやおにぎりを食べながら、笑って話してるのを見たんですよ。その景色自体は微笑ましいんですけど、田舎育ちの自分からすると、「家に帰ってメシ食わないの?」って思うんですよ。

--ですよね。

高橋:なんでそこで晩メシ食ってるの?って、すごい違和感を感じる。親は何してるの?って聞きたくなるんですよ。この子たち、ちゃんと「おかえり」って言ってもらえてるのかな、「ただいま」と言える場所があるのかなって、聞きたくなった時があって。あると信じたいですけどね。ちょっと反抗期で、家でメシ食いたくないとか、それならいいんですけど、ふと不安になるんですよ。この子たちに、「おかえり」と言ってくれる場所がないのなら、なんて孤独な時代なんだろうと。僕の思い込みですけどね。その時に、すごい埃をかぶってるありきたりな言葉だけど、「おかえり」という言葉の尊さ、「ただいま」と言える幸せを歌にしても、何かしらの価値が生まれるんじゃないかな?と思って書いた曲です。

--もう一つ言うと、すでに高橋優の歌を、帰る場所のように感じているリスナーがいると思うんですよ。そういうことも含まれているのかなと思います。

高橋:そう言ってもらえるとうれしいですね。社会的な服を脱ぐタイミングでこの曲を聴いてほしいという願望が、個人的にはあります。みんな、何かしらの服をまとっていて、仕事着や作業着、モード系やストリート系、でも身にまとってるものを脱いだ時、人間である以上だいたい同じ体じゃないですか。

--ですね。

高橋:寝る前とかに、「ああ、今日も楽しかった」なのか「今日も大変だった」なのか、それはわからないけど、戦闘服を脱いでありのままの姿になった時に、「おかえり」という言葉をかけてあげられればいいなという、僕の勝手な理想があって。そういう瞬間にこの曲が奏でられていたらいいなという想像をしながら書きました。

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