「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第16回『バンドじゃないもん! ワンマンライブ Vol.4「カサナルイズム!カナデルリズム!~君の笑顔で世界がやばい編~」』
バンドじゃないもん!が内包する強烈なスリルとは? Zeppワンマン徹底レポート
アカシックの奥脇達也が作曲した「君の笑顔で世界がやばい」は、2015年4月22日にリリースされた初のフル・アルバム「Re:start」のリード曲だ。この楽曲には「"ロックはしんだ"とシモンズ言ってた直接聞いてはないけれど」という歌詞があるが、この日は「"ロックはしんだ"とシモンズ言ってた もんスターは生きてるぞー!」とみさこが歌詞を変えて歌った。暴れ曲である「タカトコタン-Forever-」では、みさこが激しくドラムを叩いている最中に、甘夏ゆずもそのドラムを叩いていた。「タカトコタン-Forever-」と同じくゆよゆっぺが作詞作曲した「速い曲」では、突然「誰が速いか選手権」が行われ、七星ぐみと甘夏ゆずが花道に転がるほど激しい動きをすることに。「恋の呪文はスキトキメキトキス」は、「もっと愛しあいましょ」と同じくミナミトモヤとONIGAWARAがアレンジしたカヴァーだ。
メンバーがいったんステージ脇に引くと、舞台装置の2階に再び現れた。歌われたのは「ヒラヒラ」。ももいろクローバーの「走れ!」で知られるKOJI obaが作曲したミディアム・ナンバーだ。そこから降りて、みさこ・望月みゆ・甘夏ゆずがが楽器をセッティングしてから歌われたのは「Back in you」。初期から歌われてきた、甘いミディアム・ナンバーにして名曲だ。作詞はかっちゃんがしているのだが、「鳴りやまないドラムロール」という歌詞が、ツインドラム時代のバンドじゃないもん!を思い出させる。この日のみさこのドラムの狂おしさを聴きながら、彼女もまた思うところがあるのかもしれない、と感じた。
そして「ショコラ・ラブ」は、最初期から演奏され、2013年にリリースされた初めてのシングルだ。今でこそ「メガネ萌え」と繰り返すサビに振り付けがあったり、「大好き」という歌詞にもんスターが「俺もー!」と返したりするが、そうした形式になったのは最近のことだ。この楽曲で初めてMIXを打ったのは、前述の原宿アストロホールでの私のはずで、当時はまだMIXさえ入ってなかったのだ。言い換えれば、「ショコラ・ラブ」は2011年から現在までのバンドじゃないもん!の歴史が詰まっている楽曲だ。
そして、2度目のハイライトにして、この日最大の山場が訪れた。セットリストには「UP↑ぷらいむ(演奏)」と書いてあったが、最初意味がわからなかった。みさこ・望月みゆ・甘夏ゆずの演奏は他の楽曲でもしているし、「演奏」と特記されているということはインストルメンタルなのだろうか……と考えていると、メンバーがステージから去ってしまった。そして長い映像が始まる。映像の中で、恋汐りんごは「ツインドラムはかっちゃんを見ていていいなと思ってた」と語り、七星ぐみは「初期のバンもん!に対するリスペクトをしつつ、今の6人でやるという感じかな」と語った。
そう、映像の中の彼女たちは、全員が楽器を持って演奏の練習をしていたのだ。恋汐りんごはドラム、七星ぐみはキーボード、天照大桃子はギター。ふだんはキーボードの甘夏ゆずはギターを抱えていた。多忙な中でいつ練習をしていたんだ……と驚きながら、完全にガールズバンドとなったバンドじゃないもん!の登場を見守った。
「UP↑ぷらいむ」は、みさこが歌詞にメンバーの名前を織り込んだ2013年のシングルだ。その発売以降メンバーは変わってしまったが、「Re:start」収録のヴァージョンでは歌詞が書き直され、新たに加わったメンバーたちの名前もしっかりと織り込まれている。みさこが「本当の意味で一緒のライブをしたい、一緒に歌ってください!」と言うとスクリーンには歌詞が映し出された。
私はその光景を見ながら、天照大桃子と甘夏ゆずの加入直前、みさこに公式サイト用のインタビューをした夜のことを思い出していた(参考:みさこ:ロングインタビュー http://bandjanaimon.com/news/1026/)。新加入する2人のうち、みさこが「音楽的なパフォーマンスを柔軟に引っ張ってくれそう」と言う甘夏ゆずは、なんとマルチプレイヤーだという。また、みさこが「歌やダンスの技術をしっかり持ってる」と期待する新メンバーは、ちゃんもも◎だと聞いて驚いた。マルチプレイヤーと「テラスハウス」出演者という組み合わせに、今後がまったく想像できなかったが、初めてふたりがステージに参加した2014年5月16日の新宿ロフトでの『SHINJUKU LOFT 15TH ANNIVERSARY EXTRA!!! Presents ばんばんネギ大もり!!!』は、異様な勢いと熱気を感じさせるライヴだった。アンコールでは、大森靖子やNegiccoとともに、Buono!の「初恋サイダー」が生演奏で歌われたのだが、そこにいきなりショルダーキーボードで実戦投入されたのが甘夏ゆずだ。天照大桃子のヴォーカルも含めて「この勢いなら行ける」と確信した夜だった。その天照大桃子と甘夏ゆずの名前も新しい「UP↑ぷらいむ」には織り込まれている。
「UP↑ぷらいむ」は、実は本編ラストの1曲前だった。手堅く考えるなら、終盤は盛りあげて終わるべきところを、あえてその流れを切ってまでバンドじゃないもん!は自身のルーツを振り返り、そして新たな試みとして全員によるバンド演奏をした。本編最後の「パヒパヒ」では、紙吹雪が盛大に噴出された。