キスマイ『KIS-MY-WORLD』初動セールス30万枚突破！　王道的な内容で自己最多記録を更新

　そしてリアルサウンドで注目したいのは、〈初回B盤〉のリミックスCD。起用されたリミキサー陣の豪華さである。エムフロの☆TAKU、FPMこと田中知之、ジブリ楽曲のリミックスで知られるDAISHI DANCEなど……というのはまだツカミに過ぎず、DJ WATARAI、和楽器バンド、Jazzin’park、DJ Hasebeまでが参加！　主語がキスマイ新作であることを忘れそうになるこの人選に、メンバーの意向がどれほど反映されているのかはわからないが、それはそれとして、よいスタッフに恵まれているのだなと素直に思う。ただの話題作りとはまったく違う、ダンスミュージックへの愛が強く感じられる。

　そもそもキスマイは、ジャニーズの中でも王道というか保守派というのか、いや、敢えて狙っているのかもしれないが、「いささか古い」という感じの楽曲が多いグループだ。今どきのストリート感はないし、ワルさや色気はあまり強調されず、歌詞やダンスの振り付けを含めると光GENJIっぽさがプンプン臭う、というのは多くの人が指摘しているところ。普遍的でメロディアスで、変な匂いが加味されていない曲。それはDJにしてみればいい素材ということであり、各自が自由に楽しんで制作できたのだろう。そして、キスマイに限らず、優れたアイドル作品には他ジャンルの才能を集めるプラットホームの意味がある。今回の『KIS-MY-WORLD』は見事にその役割を果たしているのだ。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク／ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA！」などに寄稿。