市川哲史の「すべての音楽はリスナーのもの」第20回
BABYMETALが“元洋楽少年”を熱狂させる理由【海外篇】 市川哲史が海外ファンの反応を分析
人差指と小指を立てた拳\m/はその昔、スタン・ハンセンが「ウィぃぃぃぃー!」の雄叫びとともにリング上で突き上げると、<テキサス・ロングホーン>と呼ばれた。やがてレインボー時代のロニー・ジェイムス・ディオにより、\m/はヘヴィメタル魂を象徴する<メロイック・サイン>として、全世界に定着する。
あれから40年――英仏独伊瑞墺米加墨のどこだろうが、BABYMETALのライヴ会場を埋め尽くす外国人もとい地元民みんなが掲げる\m/は、いつしか<キツネサイン>と呼ばれるようになったとさ。
めでたしめでたし。「キツネだお」
<ハイスパートな超絶技巧系轟音ヘヴィメタ・サウンド>をがっつり装着した<甘くてキュートな歌謡曲>を、<日本一キレっキレの鮮やかなフォーメーション・ダンス>でキメられて、抗える奴などまずいない。いまや世界一のフィジカルエンタだ。
そんな<メタルとアイドルの「これでもか」的邂逅>に日本人でも度肝を抜かれたのだから、アイドル免疫すらない外国人にとっては目茶目茶衝撃的だっただろう。
国境を越えて、BABYMETALは圧倒的に心地好いのだ。
まず彼らの目には、ベビメタはおそらく小学生にしか映っていまい。しかしその黒髪のロリータ少女3人が、まるでアスリートのように踊り続けるのだ。しかもストイックに。
彼女たちが見せる人間の身体能力の限界に挑むような高速テクニカル・ダンスは、超速弾きギター・ソロやインタープレイと同じ感覚でクールなはずだ。演る側も観る側も知らぬ間に溺れてしまう、あのトランス感である。
またベビメタ独特の容赦ないツンデレ・パフォーマンスも、その理由は理解できずともたまらんだろう。まるでドラッグのようにチョコに溺れてる女子の唄とか、実はイカレた歌詞たちも癖になっちゃうようだ。心中察するわ。