AKB48の「ミュージカル路線」はここまで進化した 舞台『マジすか学園』が示したAKB歌劇団の最新系

 このところ、『AKB49』『マジすか学園』もしくは『指原莉乃座長公演』と、48グループが手がける演劇企画が相次いだが、AKB48の楽曲をミュージカルに活かすという発想は、早いところでは2009年のAKB歌劇団『∞・Infinity』で具現化していた。同作の構成・台本・演出を手がけた広井王子は当時、AKB48楽曲を集めて物語を立ち上げるに際して、AᗺBAの楽曲群を使いながら物語を構成したミュージカル『マンマ・ミーア!』を着想のヒントとして挙げている。『∞・Infinity』は『マンマ・ミーア!』のようにAKBの既存曲を多数用いながらオリジナルの物語として構成し、AKBミュージカルの端緒となった。『マジすか学園』等のミュージカル公演は、かつて定期的な活動が嘱望されながらも長期プロジェクトには至らなかった、AKB歌劇団の系譜を継承する最新系でもある。

 AKB歌劇団の演出を引き受けた折に、広井がAKB48に宝塚歌劇団や松竹歌劇団を重ね合わせていたように、「歌劇」はAKB48を立ち上げる段階から秋元康の構想の中にあったものだ。常設劇場を持つことで公演スタイルとしてのそれは早くに実現していたが、ここにきて48グループは手持ちの楽曲アーカイブを活かしながら、演劇としての「歌劇」の実践にも積極的になってきたように感じられる。かつてのAKB歌劇団は秋元才加、宮澤佐江という二人の優れた男役を生んだ。秋元は現在、AKB48グループの卒業メンバーのうちで最も優れた舞台女優に成長し、また宮澤も大きな舞台の経験を積みつつ『AKB49』では主演を務めるなど、AKB歌劇団の蒔いた種は時を経て各日に成果をあげている。AKB48グループのミュージカル路線が活発化することは、メンバーたちの将来的な選択肢やポテンシャルを広げるうえでも大きなものになるに違いない。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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