今夏さらなる飛躍へ 気鋭のバンド・ceroの音楽に寄せる期待
加えて、ceroの音楽の魅力のひとつが同時代性だ。震災があって以降、私たちは孤独や不安にとても敏感になった。当たり前の日常が当たり前ではないこと、終りが突然やってくることを身をもって知り、4年が経った今、日々笑って過ごせる時間を取り戻しながらも、頭の片隅では常におびえ続けている。ceroが奏でる世界でも、時に停電が起こり(『大停電の夜に』)、大洪水も起こり(『大洪水時代』)、それでも変わらず気の置けない友人たちと過ごす夜がある(『Orphans』)。まさに、私たちそれぞれが暮らしている世界と地続きの風景だ。傷つき、疲れ果てた私たちを鼓舞するような前向きで耳触りのいい音楽ならゴマンとある。しかし、同じ時代を生き、同じ感覚を共有し、音楽として鳴らし続けていける存在はどれほどいるだろう。私たちが今感じるべきこと、思いとどめるべきことをきちんと再確認させてくれる音楽はどれほどあるだろう。今は彼らのように、ただ寄り添ってくれる音楽を届けてくれるバンドこそ力強く頼もしいと私は感じる。
新作『Obscure Ride』は、これまで以上にブラックミュージックの要素を取り込み、メロウでグルーヴィーなサウンドに仕上がっているとのこと。タワレコ発信のニュース(3/27)では「2010年代後半の代表作になること間違いなしの1枚」と早くも太鼓判を押している。今年要注目のバンドとして、またシーンの新たな担い手として、彼らがどこへ向かうのか、その行く先を見届けたい。
(文=板橋不死子)