Berryz工房が歩んだ11年のアイドル道ーー個性派集団はいかにして熱狂的支持を集めたか
Berryzが教えてくれた圧倒的な「楽しさ」
自由奔放ながらも、自嘲しても他人を卑下せず、下品にならず、気品を持ったアイドルとしての言動・行動が自然と身に付いている立ち振る舞い。仲の良さでは説明出来ないほどのメンバー間の円滑な意思疎通。そして悠々としたステージには貫録と余裕を見る。
そんな頼もしさすら感じる彼女たちに共感、共鳴するファンは「応援する」よりも、「ついていく」感覚に近いのかもしれない。どちらかと言えば、熱狂的ファンを抱える孤高のアーティストやヴィジュアル系バンドのノリに近いのである。デビュー当初は温かく見守っていたファンでも、少女から大人になる過程の中で、いつからか彼女たちから教わったことも多いのではないだろうか。それは何よりも圧倒的な「楽しさ」であり、売上や動員といった建前の数字だけでは決して得ることのできない満足感である。
「色んな対バンに出てきましたが、こんなに一つになった対バン、俺初めてです!」haderu(jealkb)
「ジャンルも客層も違うのに最初から最後まで盛り上がる凄いイベントだった。これが音楽の在り方だと思った。」天野ジョージ(撃鉄)
「ファンはアーティストの鑑」とはよく言ったもの、ライブとは演者と観客で楽しさを共有するものである。異種戦ともいうべき他ジャンルの共演者の言葉からも、Berryz工房のライブの楽しさが伝わってくる。それは、11年という長い歳月で彼女たちとファンが作り上げたものでもある。
あなたにとってBerryz工房とは?
ラストシングル「永久の歌」は今まで過ごしてきた時間、そしてこれからをファンの“みんな”と共有していく歌だった。そして『完熟Berryz工房 The Final Completion Box』に収められた最後の新曲「Love togther!」はファンである“あなた”へ捧げる歌。〈わがままかな こんな決心〉で始まる恋愛映画のラストを思わせる歌詞は、彼女たちを見てきた時間や愛情が深いほど、胸にくるものがあるだろう。走馬灯のように織り込まれる過去曲のキャッチーなダンスが、寂寥感漂う曲調と不釣り合いなのもどこか彼女たちらしい。
「第2の家族(清水佐紀)」「原点(嗣永桃子)」「夢の途中(徳永千奈美)」「居心地の良い場所(須藤茉麻)」「なくてはならないもの(夏焼雅)」「当たり前の存在(熊井友理奈)「青春のすべて(菅谷梨沙子)」
昨年の秋ツアーで語られていた「あなたにとってBerryz工房とは?」に対する答えは、「Love together!」完全版MVにライブ前さながらの円陣を組んだ彼女たちの口からも発せられている。過去に何度か同じ質問が行なわれていたことがあり、2010年に清水が同じく「第2の家族」、そして7人中4人が「家族」「姉妹」と答えている。家族とは大人になると家を離れていくものだ。ただ、それがどんなに遠く離れても、どこへ行こうとも、家族は永遠に家族なのである。
一世を風靡したモーニング娘。の追い風を受けてデビューした彼女たちであるが、その後のアイドルに対し冷やかな時代の流れと、当時とは違った近年のアイドルブームへと移り変わっていく中、ずっと不動のメンバーで第一線を走り続けてきた。ハロプロ内でも他グループは卒業・加入を繰り返し、いつの間にか自分たちが最年長になった。だからこそ見えていたものがあるようにも思う。Berryz工房とは、移り行く時代に流されることなく孤軍奮闘してきた“最後のアイドル”なのかもしれない。
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/twitter