SuG、起死回生の新作『BLACK』完成 その驚きの音楽的進化とは?

バラバラだけどバラバラじゃない作風の秘密

 そして2月1日、都内で行われたアルバム『BLACK』先行試聴会イベントにも参加した。yuji(G)とChiyu(B)が出席したこのイベントは、アルバム『BLACK』のうち既発シングル4曲を除く計13曲を大音量で聴くというもの。ほとんどのファンはここで初めて新曲群を耳にするわけだが……僕はここであることに気付いた。シングル曲を省いた構成でアルバム収録曲を聴くと、実はシングル曲に挟まれた数曲ごとに1つの方向性、音楽性が見え隠れすることに。

 オープニングトラック『street g♥thic』は、以前武瑠が『BLACK』と最後までアルバムタイトル候補に挙がっていた曲名を持つEDMテイストのインスト。ここから『MISSING』を経て『HELLYEAH』『overflow』『night market』へと続くのだが、ここは(この表現が必ずしも正しいとは思えないが)ラウド / ラップメタルゾーンと個人的には解釈している。いわゆる2000年代前半にブームを築き上げたUSラウドロックの色合いが濃厚に表れた楽曲がズラリと並ぶ。Limp Bizkitにも通ずるゴリゴリの『night market』からダンサブルでポップな『B.A.B.Y.』へと続く流れも、実はそれほど違和感が感じられない。そして『Dead or Dead』から『sweeToxic』までの4曲はファンキーさを追求したゾーン。試聴会でyujiやChiu、そしてイベントに急遽参加したshinpeiもこのゾーンの楽曲を「プレイヤーとして力が入った楽曲ばかり」と発言していた。

 11曲目『神様の悪戯』と12曲目『Time after time』はバラードテイストの楽曲が並ぶのだが、前後に並ぶシングル曲(『sweeToxic』と『CRY OUT』)が持つしなやかさやダークさとも見事に共鳴しており、お互いの存在感を際立たせることに成功している。そして14曲目『SOS』からラストのタイトルトラック『BLACK』では、従来のSuGが持つポピュラリティをより進化させ、『BLACK』というテーマに沿ったテイストで色付けした楽曲群。中でもラストナンバー『BLACK』が漂わせる世界観からは、この3年間の集大成とも呼べるような“有無を言わさぬ説得力”すら感じられる。

 1曲1曲を抜き出して聴けば、その作風は音楽的にバラバラかもしれない。しかしアルバムの鍵となるシングル曲を随所随所に盛り込みつつ新曲たちを並べることで、そのバラバラ感は一切ないし、むしろ各曲の位置にはちゃんとした理由があることを感じさせる。過去のSuGと決別しているようでもあり、ちゃんとこれまでの歴史を引き継いでいるようでもある新曲たちは、古くからのファンからすれば拒否反応を示すような代物なのかもしれない。しかし、その変化について時間をかけて、じっくりファンに示していこうとした結果が、活動休止期間を含む3年という年月だったのかもしれない。

 という結果を経て、アルバムを再度聴いてみる。何度も、何度も。しかし……その素晴らしさを具体的な言葉で表現することは、まだできない。だけど何度も聴きたくなるアルバム。もしかしたら、それが『BLACK』という作品の最大の魅力なのかもしれない。言葉はいらない、すべては耳で、心で感じろということなのだろうか。

 残念ながらその後、SuGのメンバーとこのアルバムについてじっくり話す機会を得られていないが、ぜひどこかのタイミングでこの「言葉で表現できない素晴らしさの秘密」について、たっぷり語り合いたいものだ。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

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