姫乃たま×マーライオン対談 音楽は“不器用な10代”をどう変えた?「舞台に立つと積極的になれる」

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左・姫乃たま。右・マーライオン。

 マーライオン、21才、ギターを弾き語る同い年の男の子。あまりに生真面目で、あまりに不器用。私、姫乃たまとマーライオンが活動を始めたのは、いまから5年前のこと。ふたりとも16才になったばかりでした。あれから多くのバンドが解散し、周囲のアイドルもどんどん引退していきました。残ったのは意外なことに、あまりに不器用なふたり。

マーライオン(以下:マー):あの、今日は精一杯話します。

姫乃たま(以下:たま):あはは、そんな生放送じゃないんだから。

 路上ライブで知らない人から「下手くそ!」と怒鳴られて泣いていたマーライオンが、今年3ヶ月連続でアルバムをリリースしました。アニソンのコピーでなんとなく地下アイドルをしていた私は、不思議なことにまだ歌いながらライターをしています。久しぶりの再会、そして初めて、友人としてではなく、音楽をやっている者同士として向き合いました。

たま「ふたりとも引っ込み思案なのに、舞台で大勢の前に立つと積極的になれる」

たま:初めて会ったのは、下北沢のCAVE-BEだったよね。あの日はTHEラブ人間の金田康平くんがブッキングのイベントだったような。当時、友人のジョンE.I..s君がThe Quandataっていうバンドをやってたので観に行ったら、弾き語りなのに全くギターが弾けないマーくんが出てた(笑)。

マー:違うの。あれは舞台上で曲作ってたの。親に内緒で活動してたから家だと弾けないし、学校だと恥ずかしいから、ステージ上で曲作ってるって悟られないように曲作ってたの。

たま:わはは、ステージ上のほうが恥ずかしいでしょ! でも、ふたりともプライベートだと引っ込み思案なのに、舞台で大勢の前に立つと積極的になれるんだよね。マーくんは当時、輪をかけて人見知りだったから、楽屋でも全然喋らなくて、周囲のバンドマンが「なんか高校生来ちゃったけど大丈夫?」みたいな雰囲気になってた。でも、舞台に出ると人が変わったように瞳孔が開いてて、弾けないギターをほとんど叩くようにしながら、女に振られたとか、絶対許さないとか叫んでて。サビだけは事前に短いメロディーが用意されてるから、さっきまで叫んでたのに急に歌い始めて、あまりのギャップにみんなが衝撃を受けてたよ。あの弾き語りスタイルはどこで確立されたの?

マー:僕は子守歌で岡村孝子とCarpentersを聞いて育ったから、自分的には、体験を歌詞に込めた、歌ものポップスをやってる気持ちだった。

たま:うーん、うん(笑)。でもとにかく周りの大人が、この子は天才だから面倒見なくちゃいけないって可愛がられてたよね。

マー:それより僕は初めて会った姫乃ちゃんが全然同い年に見えなくて、東京すげーって思った。神奈川で育ったから、恵比寿の高校に通ってるっていうのが信じられなかったし、姫乃ちゃんは僕にとって新しい文化だったんだよ。

マー「文化祭の前日に、「お前はギターもボーカルも下手だから、明日のライブでクビな」って言われた」

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今年11月から、『吐いたぶんだけ強くなる』『ボーイミーツガール』『マーtodaライtodaオォォォン!!!』と、三ヶ月連続でアルバムをリリースするマーライオン。

マー:僕が音楽を始めたのは失恋がきっかけ。中学二年の時に松たか子に似てる女の子から、「趣味がない男とは付き合えない」って振られて……。

たま:松たか子似の中二女子!(笑)

マー:僕は小説を読むのが好きだったけど、たしかにそれ以外の趣味がなかったから、楽器を始めようって思った。ちょうどその頃に、第一回目の閃光ライオットが募集を始めてたから、バンドメンバーを集めてthe pillowsのカバーをした。でも録音方法もわからないし、応募の期日には間に合わなくて、それでもなんか楽しかったから、高校では軽音部に所属して、THE BACK HORNのコピーを三人でやる無謀なバンドを組んだら、文化祭の前日に、「お前はギターもボーカルも下手だから、明日のライブでクビな」って言われて。せめて本番終わってから言ってくれよって、はらわたが煮えくり返るような気持ちで演奏したよ。でもライブは楽しかったんだよね。ただもうバンドで揉めるの嫌だったから、マーライオンって名前でソロ活動しようって決めたんだ。

たま:私は音楽が好きだったから高校からDJをするようになって、それで初めて地下アイドルのイベントに行ったんだよね。そこで知り合ったアイドルさんに誘われて、いきなり舞台に立ったから、それ以前に楽器とかを触ったことはなかったなあ。

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