藤谷千明が「バカ社長」を直撃
異端のレーベル主宰者 ザ・クレイジーSKBが明かす悪行伝説「ブッ壊すだけだと面白くないんで…」
「普通著者は編集しないですよね、あんまり」
異端のパンクレーベル「殺害塩化ビニール」を主宰するザ・クレイジーSKB(通称バカ社長)が自身の活動30周年突破を記念して『狂人白書 ザ・クレイジーSKB&殺害塩化ビニール伝説』を10月27日に上梓する。ライターの藤谷千明氏が、クレイジーでありつつもどこかユーモラスな彼のキャリアに迫る。
ーー「狂人白書 ザ・クレイジーSKB&殺害塩化ビニール伝説」が発売されますが、この本を作るきっかけを教えて下さい。
ザ・クレイジーSKB(以下SKB):「狂人白書」の構想は2007年からあったんですけど、3年前に「社長の30周年記念で本を出さないか」という話があって、「資料とかめちゃくちゃ多いから大変ですよ」「面倒臭いから嫌です」って言ってたんです。でも「いや、やりましょう」と編集者から口説かれて。自分ではやりたくないから「資料渡すんで、そっちでまとめてくれるんだったらやりましょう」っていう流れでOKしてプロジェクトが動き出した訳だったのですが、やっと決まった出版社がダメになってしまったり、他では断りまくられと中々出版社が見つからなかったんです。結果、ロフトブックスが手を差しのべてくれて何とか出版出来る事にはなったんですが……。
ーー「なったんですが」?
SKB:編集者に百年に一度の災難の数々が降り掛かり途中で編集者が編集作業をギブアップしてしまったんですよ。まぁ、いつも自分が関わって何かを作ろうとすると決まって周りに災難が降り掛かるので、またかって感じなんですが(苦笑)それで急かして寄稿者の方に原稿もらってる事もあり、最後迄作り上げないと納得いかないので、自分とデザイナーと自分より殺害塩化ビニールに詳しい右腕の3人で編集作業を1ページから始めました。普通著者は編集しないですよね、あんまり。
ーーそうですね……。
SKB:なので、結構お堅い資料本でいく予定だったのが本の規定概念をぶち壊してやろうとやりたい放題やりました(笑)。ただ666ページで内容作っていたのですが、333ページが限界ラインということになり、泣く泣く削ったり凝縮したりする作業が時間もかかり大変でした。デザインレイアウトも頭の中のものを具現化する為に、「ここに人参の写真入れて」、「こいつを斜め34度にして」とか、「この写真と大事なキーワードを本の折り目の中に見えないように配置して」だの、付きっきりでいちいち指示出してデザイナーが形にして行くという細かな作業をほぼ毎日不眠不休で取り憑かれたようにやってました。と同時に右腕が横でひたすらスキャンやキーパンチャーやDJをしながら冷静な判断で暴走にストップかけるという連係プレーで。
ーーそれはお疲れ様でした。「殺害塩化ビニール」ってすごいインパクトのある名前じゃないですか。由来は?
SKB:「殺害塩化ビニール」の前に「マーダラス・テープス」と銘打ってカセットテープを出してたんですけど、塩ビ盤出そうかなって思ったんですよ。マーダラス・テープス、殺害カセットテープだから次はレコード盤、塩ビ盤だから、塩化ビニール…殺害塩化ビニール。クソつまらない安易な由来ですね(笑)。で、まぁソノシートから始めたけど、そっからすぐCDになっちゃったんで、結局塩ビってEP1枚くらいしか出してないっていう(笑)。
ーー(笑)。この名前だからオウム事件の頃、警察からクレームがついたという話を昔聞いたことがあるんですが…。
SKB:正直怒られる筋合いはないんですけどね!要はオウムの中の人間がやってるっていう勘違いで。何か向こうの言い分によるとサリンがビニール袋に入っていたので「殺害塩化ビニール」は怪しい、まぎらわしいと。
ーー連想ゲームにもなってないじゃないですか…!
SKB:そう、頭の悪いこじつけ。で、その頃ちょうど全国からデモテープを募集していたので、「毒殺テロリスト」というバンドがデモテープを送ってきたんですよ。住所を書かずに後ろに「毒殺テロリスト」って書いてて、表に「殺害塩化ビニール様へ」。それが郵政省で引っかかって。で、「爆発物処理班立会いのもと開封させていただいてもよろしいでしょうか」という連絡がきて…「はい?」っていう感じですよ(笑)。で、開けてみたらカセットテープだったっていう。そういうのが度々あって紛らわしいからレーベル名を変えろと。嫌だ、変えろ、嫌だ、変えろの繰り返し(笑)。あんまりめんどくさいんで「殺害教団S.K.B」っていう名前に変えたんです(笑)。
ーーもっとダメじゃないですか!(笑)。その頃は全国のクレイジーな人達からデモテープを募って「殺害サドンデス」というオムニバスもリリースされていましたよね。
SKB:そうですね、まさにそれです。カセットテープで音源募集してんのに髪の毛の束が入ってたりとかネズミのミイラ化したものが送られてきたりとか。