ドキュメンタリー映画『あっちゃん』インタビュー
ニューロティカ・あっちゃんが語る、バンド活動30年「文化祭の延長みたいな感じでやってきた」
今年、結成30周年を迎えたパンクバンド「ニューロティカ」のボーカリスト、イノウエアツシことあっちゃんのドキュメンタリー映画『あっちゃん』が現在、製作されている。同映画は、制作費をクラウドファンディングサービスのキャンプファイヤーで募り、約940万円という、インディーズ映画としては異例の金額を集めたことでも話題となっている。
ライブ回数は1700回を超え、氣志團や175R、PUFFYなど様々なアーティストに影響を与えてきたニューロティカ。唯一のオリジナルメンバーであるあっちゃんは、普段はお菓子屋として働きながら30年間、バンド活動を続けてきた。その継続の秘訣とはいかなるものだろうか。そして、ニューロティカがシーンに与えた影響とは。
ドキュメンタリー映画の監督ナリオ氏と、主人公であるあっちゃんに、映画製作秘話や初期ニューロティカの時代を振り返るインタビューを行った。
ナリオ「インディーズ映画としては日本で一番の額が集まった」
ーーニューロティカの映画を作ることになったきっかけは?
ナリオ:ドラムのナボちゃんが、30周年だから色々な事を仕掛けていこうと言っていて、その一環として映画を作ろうということになりました。厳密に言うと30年間続けているのはあっちゃんだけなので、なぜ彼がこれまでバンドを続けてこられたのかというテーマに密着したドキュメンタリー映画にしたいと思っています。僕は昔からニューロティカの映像に関わってきたので、今回の件は二つ返事で引き受けました。
あっちゃん:ナボちゃんはニューロティカのプロデューサー的な部分があって、サウンドはもちろん、PVの編集とかも自分でやっちゃうんですよ。
ーー資金集めにクラウドファンディングを使ったのも珍しいですね。
ナリオ:僕自身、そういう発想は全然無くて、最初はニューロティカ周りのお世話になってる方々に呼びかけて資金を集めようって話だったのですが、ニューロティカと親しいバンドの人がクラウドファンディングに詳しくて、色々と教えてくれました。目標額の350万円が集まるかどうかとみんなでヒヤヒヤしてたのに、最終的には250%になって。インディーズ映画としては日本で一番の額が集まったと言う記録が出ました。これも30年の信頼と実績でしょうね。
あっちゃん:最初、俺は「人からお金貰うなんて性格的にダメだ」って言ってたんだけど、みんなにちゃんとバックがあって、ただ貰うだけではないというので、クラウドファンディングを利用しました。でも、こんなに集まると思わなかったから、どうしようかと(笑)。とりあえず、一番高い額を寄附してくれた人に、楽曲に名前を入れてレコーディングするっていう企画とか、いろいろ考えている。
ーー公開はどれくらいの規模を予定していますか。
ナリオ:支援してくれるパトロンさん達との公約に「東名阪は絶対やります」っていうものがあるので、東京、名古屋、大阪の公開は絶対にやります。そこから札幌、九州とかも視野に入れたいですね。また、ライブハウスとかではなく、映画館で一般映画として公開するということにもこだわっています。ここ最近、ロック系のドキュメンタリー映画がすごく増えていて、しかもけっこう数字を出しているらしいんですよね。ニューロティカだって歴史のあるバンドで、同じステージに行っても負けないくらいのストーリーを持っていると思うので、そこで勝負したいと思います。
ーー今回、かなりあっちゃんの私生活に密着していると聞きましたが。
ナリオ:そうですね。ただ、内容がまだ固まりきらないところがあって。というのも、あっちゃんのお菓子屋の日常ってあまりにも普通なんですよ(笑)。そんなに特別な事が起こるわけじゃくて、普通に仕入れに行って、普通にお菓子を並べてっていう感じで。それをずっと撮っていても、ドラマが起こるわけでは無い。あっちゃんは公私ともにハッピーで、良い仲間に恵まれて、家族とも仲良いし、毎日美味しいお酒飲んでいるだけ。大体、おもしろいドキュメンタリーには悲劇が付き物なんだけど、あっちゃんにはそれがないんですよ(笑)。でも、その分ステージに上がってスポットライトを浴びている時とはギャップがあって面白いので、その辺をうまく引き出していけたら良いなと思っています。
あっちゃん:酒飲んでばっかりいるから、インタビューが全部撮り直しになったりしてね(笑)。
ナリオ:酒飲んでるとかっこつけたりするから(笑)。今回、あっちゃんの家に泊まりに行って、寝食を共にして私生活も丸ごと撮っています。その日々の中から、同期のバンドーー筋肉少女帯とかジュンスカとかブルーハーツとかがみんな解散したりしているのに、なぜ彼は30年間バンド活動を継続できたのかを見い出せれば良いなと。