物語音楽の旗手Sound Horizonが新曲先行配信 さやわかが「並行世界」をキーワードに読み解く

 サウンドクリエイターのRevoを唯一のメンバーとして、必要に応じて多様な歌手や奏者、ダンサー、声優、役者等を起用する音楽ユニット、Sound Horizonが10月1日に発売するニューシングル『ヴァニシング・スターライト』より、リード曲「よだかの星」の先行配信を開始した。同作は、10月27日にメジャーデビュー10周年を迎える同ユニットにとって、その記念作品の第2弾となる。

 Sound Horizon は、物語性のある歌詞と組曲的な音楽形式による「物語音楽」という作風で人気を集め、公式twitterではその物語に関係した“謎解きツイート”をつぶやくなど、インターネットを活用した仕掛けでも注目されてきた。6月にはLINE公式アカウントも開設、クロスメディアでさらにその世界を拡張している。

 Sound Horizonに詳しいライター・物語評論家のさやわか氏は、今回配信されるリード曲について「10周年を踏まえたうえで『Sound Horizonが存在しなかった世界』を作り上げているのではないか」と、そのコンセプトを分析している。

「Sound Horizonはこれまで、主にファンタジー路線の物語世界、彼の表現でいうところの“地平線”ごとに展開される物語を重視してきましたが、同作で描かれているのは、今まで距離を取っていた“現代日本”のパラレルワールドなんです。そして同曲は、元ネタである宮沢賢治の『よだかの星』と同じく自己犠牲の悲劇的な物語をベースに作られており“誰にも理解されないけど、この身を燃やしつくすほど全力疾走して、最後は星になるのだ”というメッセージを、Sound Horizonがこの10年でやってきたことに重ねあわせて表現しているのではないでしょうか。これまでも作品にはRevoに似たキャラクター(“似て非なる者”と称される)がそれぞれの物語の主人公格として登場していましたが、今回はそういう存在として“ヴァニシング・スターライトというバンドを組んでいるが、上手くいっていないミュージシャン”が登場します。しかし先行公開されたMVをチラッと見た限りでは、今回はその主人公を助ける存在として、Revo本人もキャラクターとして登場し、主人公に宮沢賢治の『よだかの星』をプレゼントしているように見えるのが興味深いですね。つまり“似て非なる者”が人々の理解を得られず成功していない世界にいたとしても、パラレルの分身(本体)であるRevoが彼に寄り添っている、という風に捉えることができます。Revoが現実世界から飛び出し、別世界を俯瞰しながら転々と旅をしている、というこのような演出は、別プロジェクトであるLinked Horizonの物語の手法でも見られたものです。10周年を踏まえて、Sound HorizonだけでなくLinked Horizonでの活動の経験も生かされた格好と言えるのではないでしょうか。もちろん、現実と近しい設定で自身を登場させたのは、10周年という節目を経たことが少なからず影響しているのかもしれませんね」

 また、今回の作品の登場人物は「過去の作品と関連性があるのではないか」と、同氏は指摘している。

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