ユルさとアツさで独自の進化 清純派ヒップホップアイドルグループlyrical schoolはブレイクするか?

"ユルさ"にアイドルらしい"アツさ"さを加えた、独特の進化

 2012年6月、改名と同時に発表されたのは、タワーレコードのアイドル専門レーベル「T-Palette Records」に参加すること。ここからリリスクのパフォーマンスは、元々の魅力である「ユルさ」を残しつつも、そこにアイドルらしさを加えた、独特の進化を遂げて行く。それはtengal時代にはむしろ避けられているかに見えた、前述の今日的なアイドルらしいアツさであり、全力感を取り入れて行くことだった。そのことを最も象徴した出来事は、2012年8月に開催された「TOKYO IDOL FESTIVAL2012」でのストリートラップだろう。思わぬアクシデントで出演するステージがなくなった彼女たちは、TIFの無料スペースをファンとともに練り歩き、ハンドクラップをしつつ持ち曲を披露。ピースフルな雰囲気がありつつも、ステージに出られない悔しさやアツさを感じさせる、リリスクらしいパフォーマンスだったといえる。

lyrical school「おいでよ」

 モラトリウム期を終えたリリスクは、メンバーの脱退、増員を繰り返しながら、シングルを定期的にリリースし、その度に規模を拡大させた来た。中心にいるのはプロデューサーのキムヤスヒロであり、マネージャー兼多数のリリスク曲の作詞を手掛ける岩淵竜也。高校の同級生だった彼らが舵を取り、tofubeatsをはじめ、イルリメ、NATSUMENの・AxSxE、KICK THE CAN CREWのLITTLE、RomancrewのALI-KICKなど、多彩なアーティストと絡みつつ、振り幅を広げて行った。

BABYMETAL、でんぱ組.inc、BiS…lyrical schoolが目指す先

 「何が王道のアイドルとするか」は意見の分かれるところだが、仮に既に国民的な認知度の高いAKBやハロプロを王道のグループアイドルとするなら、ももクロはそれら王道アイドルがやらないことをあえてやる「非王道スタイル」を貫くことで他との差別化をはかり、ブレイクを果たした。だが、ももクロがブレイクした後は、その非王道スタイルも王道スタイルの1つの形態となったといえる。それらのグループのブレイクはアイドル市場拡大の呼び水となり、多様性を促進させた。「アイドルとメタルの融合」を掲げるBABYMETAL、電波ソングを主軸としたでんぱ組.inc、アイドルカルチャーに対するメタ的な視点から活動を展開して来たBiS…。清純派ヒップホップアイドル・lyrical schoolがそこへ続くかどうか、今後に注目して欲しい。

■lyrical school(リリカルスクール)
清純派ヒップホップアイドルグループを掲げる、ami、ayaka、mei、yumi、hina、minanの6人組。2010年8月、tengal6として結成。タワーレコードのアイドル専門レーベル・T-Palette Records所属。
オフィシャルサイト

■岡島紳士(おかじま・しんし)(@ok_jm)
1980年生まれ。アイドル専門ライター。著書、共著に『グループアイドル進化論』、『AKB48最強考察』、『アイドル10年史』『アイドル楽曲ディスクガイド』など。埼玉県主催「メディア/アイドルミュージアム」のアドバイザーと、会期中に行われた全9回の番組&イベントMCを担当。DVDマガジン『IDOL NEWSING vol.1』を手掛けている。
オフィシャルサイト

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