赤い公園・歌川、森高千里、福田洋子……クールなプレイが光る女性ドラマー6選
凛々しく美しく おかもとなおこ/岡本奈穂子(つばき)
ファッションと髪形、同性を惹き付ける容姿と細腕からは想像出来ないような凛々しく強さを感じる正確なドラミング。心に沁みる切ないメロディーとシンプルな3ピースロックのカッコ良さを届けるつばきのドラマー。
日暮愛葉とのバンド、THE GIRL、新生SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER、そして驚異の11台ドラムバンド“DQS”でも活躍している。
手数王の遺伝子 SATOKO(FUZZY CONTROL)
言わずと知れたトップドラマー、手数王・菅沼孝三を父に持つ。自身のバンドでは豪快でパワフルなロックドラマーとして見る者を魅了しているが、DREAMS COME TRUEのサポートでは卓越したテクニックに裏付けられた歌モノのドラマーとしても活躍。力強さを感じるとともに、時折垣間見える可憐さも魅力的である。
通常とは逆に左手でハイハット、右手でスネアを叩く“オープンハンド”という手をクロスさせないで叩くスタイルが印象的である。左利きであり、利き足での「黄金の左足」とも呼ばれるハイハットのペダル捌きは圧巻だ。
リズムの鬼才 山口美代子(DETROITSEVEN)
完全に日本人離れ、いや人間離れした別次元のグルーヴ。手足をはじめ、身体中からリズムが溢れ出し、研ぎ済ませれたスピード感としなやかさが共存する。ドラムのことが解らない人でも彼女の乱れ打つ様に釘付けになることだろう。野生なドラミング見えつつも、楽曲やライブのテンション、そのタイミングに合わせて絶妙なグルーヴを変幻自在にコントロールする。低めにセッティングしたシンバル、徹底的に無駄をそぎ落としたシンプルなドラムセットを両手両足、四股を駆使して演奏する姿は、ドラムを“操る”という言葉がよく似合う、まさにリズムの鬼才だ。
現在はギターボーカル、菜花知美の出産〜子育てにより活動休止中のDETROITSEVENであるが、R&B・ファンクインストバンド、BimBamBoomや、LOVEとTOKIEとのバンド、THE LIPSMAXをはじめ、tricotやPUFFYなど、数多くのサポート・セッションで活躍中である。
ドラムは体力を使う楽器である。男性バンドでも体格の良いメンバーがドラムを担当したり、「パワードラム」と呼ばれる迫力のあるプレイもある。だが、実際は力任せではなく、力の抜き方が肝であったりする。それはスリムで小柄な女性ドラマーたちが証明してくれている。
ガールズバンドの先駆け的存在であるSHOW-YAのドラマー、角田美喜は当時周りにドラムを叩く女性がいなかったこと、お手本にするようなプロの女性ドラマーもいなかった経験から、女性ドラマーを対象にしたレッスンを行なっているという。
女性が男性のようなプレイすることは可能であるが、男性が女性のようなプレイをすることは無理かもしれない。そういったプレイに求められるのは繊細さとしなやかさ、その感性であるからだ。多様化する音楽とともにプレイヤー、ドラマーにも個性が求められる昨今、その繊細かつ優美なプレイは武器になるのである。
これからも優れたプレイヤーたちがシーンを彩ってくれるに違いない。
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/twitter