期待の新鋭、ROTH BART BARON登場「過去から学んだことは教師でもあり反面教師でもある」

「どんな下手なバンドでも幅の広さや教養の高さはある」

――録音好きということですが、今の音楽シーンはライブ重視の傾向がありますよね。

三船:僕らはライブ自体まだそこまで多くないですし、ライブハウスが怖くて近づけなかったので(笑)。録音物を作っているときは、ライブでどう再現するかというところを考えないんです。でもライブでプレイ出来ない曲は録音できないというのも理解しているので……頭で鳴ってる音を忠実に再現すると「このままだと手が六本必要になってくる」という現象が度々起こります(笑)。それをどうフィジカルに翻訳するのかっていうのは、作った後に考えるようにしています。毎日アレンジが変わるので(笑)。でも、その録音物との差異が楽しいんです。僕らよりメンバーが多いのに同期を使って、CDと同じことをライブでやっているバンドに対して「アイドルじゃないんだから」って冷めてしまったことがあるので、自分たちでは気を付けています。

中原:フィジカルで出来たものをプレイするのは、バランスが難しいですからね。

――1月にはNYでライブも行っています。

三船:マンハッタンやブルックリンでライブをしました。最初、ブッキングの話が来てたんですけど、そこから連絡が取れなくなったんです。主目的はレコーディングだったので、それが終わってニューヨークに向かう前に、中原がライブハウスを調べたら、最初に話をくれたライブハウスが、こっちに一切連絡もないまま“Tomorrow:ROTH BART BARON”って宣伝を打っていて。「明日ライブあるらしいよ!」って急いで向かいました(笑)。

――ライブをやってみて、現地の反応はどうでしたか?

三船:良かったら声が上がったり、その場で反応が来るんです。お客さんもライブを見に来るというより、BARで飲んでて気持ちいい音かそうでないかって基準で判断するので。静かに聴いて後からTwitterで感想が来るということもなかったですね。楽屋まで入ってくるような勢いで「君たちの声はアンユージュアルだ」みたいな話をされたり、「レコードは無いのか」とも聞かれましたし。日本だとPAさんがついてくれたり、音作りにも付き合ってくれるので、確実に環境が良いんです。だけど逆に「お前ら演奏して稼ぎに来てるんだから、勝手にやってよ」みたいな、良い意味での残酷さを知ったことで、気が引き締まりました。

――現地のバンドを見て何か感じたことはありますか?

三船:向こうのバンドって全然リハーサルしないんですよね。

中原:直前に来てちょっとやるだけなんです。声だけ出ればOKみたいな。

三船:音作りとかリズムの作り方の面では、日本のバンドより多彩かつ自由だと思いました。どんな下手なバンドでも幅の広さや教養の高さはあるから、下手くそでも「いい!」って思えるバンドがいっぱいいて、見てて楽しかったです。変な四つ打ちはしないみたいな。

――日本では、同時多発的にインディーシーンを盛り上げている、森は生きているや吉田ヨウヘイgroupなどとは切磋琢磨している印象があります。

三船:吉田ヨウヘイgroupは、ライターの岡村詩野さんがパーソナリティーを務める『radio kitten』(レインボータウンFM)をきっかけに、OTOTOYから配信されたコンピレーションアルバム『radio kittenコンピレーションVol.2』に収録されたことをきっかけに、吉田くんからイベントのオファーを頂いて、初めて共演しました。森は生きているは、僕らが前のアルバムを出したのと同時期に彼らが『日々の泡沫』を出していて。僕はそれを買ったので一方的に知っていて、「いつか一緒にイベントで共演出来るといいね」なんて話してたんですけど、そうしたら向こうから連絡を取ってきてくれて。初めて同年代で共感を覚えるバンドに出会ったと思いましたね。偶然今年はその3バンドのリリースが一気にあることを知って、面白いことになりそうだとワクワクしています。僕らを含めた3バンドは下手にベタベタ仲良くせずに、互いがお互いをライバルだと意識しているので、僕は勝手に『ドラゴンボール』の悟空とベジータみたいな良い関係だと思ってるんですけど(笑)。僕らは日本のバンドをそんなに知らないので、彼らに教えてもらって聴き始めたりしてますね。

――参照点が同じバンドはこれからも出てくると思いますが、その中で先頭を切っていこうという思いはありますか?

三船:そんな、先頭を切るようなタイプではないです……(笑)。ふわふわとやっていて、もしかしたら先頭にいる、なんてことはあるかもしれないですけど。

(取材・文=編集部)

■リリース情報
『ロットバルトバロンの氷河期 (ROTH BART BARON'S “The Ice Age")』
発売:4月16日
価格:¥2,592(税込)

<収録内容>
1. 氷河期#1(The Ice Age)
2. 氷河期#2(Monster)
3. 氷河期#3(Twenty four eyes / alumite)
4. 春と灰(Ashspring)
5. 蠅の王(Lord of the Flies)
6. Buffalo(taivaan helmi)
7. 帰還(Cheap fall)
8. 炎(Neonlight)
9. オフィーリア(Ophelia)

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