GAGLE、震災経て見い出した音楽観「悩めば悩むだけいいものが生まれる、という問題ではない」

――今作を聴いて感じたことは、GAGLEのデビュー・アルバム『BUST THE FACTS』(01年)を想起させられたことです。原点回帰とは異なる感覚ですが、質感が非常に似ていると感じました。

HUNGER:これまでアルバムをリリースしてきて、ミュージックビデオや曲そのもの、イメージすらも自分の手から離れてしまう瞬間があった。それは、腑に落ちていないからなんじゃないのかな、と感じることもありました。でも、今回はその感覚がまったくない。確かに原点回帰、という感覚はないけど、「本当に心の底から納得できる作品」という意味では、『BUST THE FACTS』にもっとも近い作品だと思います。

 『BUST THE FACTS』がインディーからのリリースで、それ以降メジャー・レーベルでアルバムを制作し、いろんな道のりを経て、またインディーからのリリースに辿り着いた。いくつもの世界を見渡し戻ってきたな、っていう感覚は確かにあるかもしれませんね。

GAGLE 聞えるよ feat. 七尾旅人(Official PV)

――では、先ほど話した“最終的な判断”をしながらの、実際の制作について聞かせてください。

HUNGER:メッセージ性のある曲、ラップで勝負を挑む曲、他ジャンルへも訴求できる曲、そんなことを漠然と考えながら、制作は進みました。今回、アルバムに参加してもらった客演陣やプロデューサーは、これまでずっと地でつながってきた人ばかり。背伸びをせず、信頼関係を置けている人たちと何かを生み出したい、という気持ちが無意識であったんだと思います。悩んでいた時期を経て、完璧な制作モードに入ってからは、ラップでヒーヒー言わせる曲を作りたい! という願望がむくむくと湧いてきて(笑)、それもしっかり形に落とし込むこともできました。

――するとリリック面でつまずいた、ということはなかった?

HUNGER:今だから話せるんですが、前作の表題曲「SLOW BUT STEADY」は、すごく悩みに悩んで、苦しんだ結果にできた曲だったんです。それは――自分でいうのもなんなんですが――GAGLEクラシックと呼ばれる「雪ノ革命」「屍を越えて」「若き匠たちへ」に続く“アンセム”にしたい想いが強かったから、というのが大きく関係していて。でも、結果的にクラシックはおろか、GAGLEを代表する曲になった感覚もない。悩めば悩むだけいいものが生まれる、という問題ではないんです。そう考えると、今作のリリックに関しては、そういった気負いもなく、素直にペンを走らせることができた。書き直した曲もあるけど、それは愛着ゆえの書き直しだったんだな、って後から認識することもできましたね。

 兄貴が話したように、自由に作れる、遊びの延長でできたような曲が、GAGLEらしさに行き着くことが多い。前作は精神的にも神経的にも“洗練”というイメージを引っ張りすぎてしまっていたと思うんです。ただ、いまこうして思える、ということも大切なことであって、決して粗悪な作品を作った、という認識はまったくしていません。3人が入れ込んで作り上げた作品であることには間違いないので。

――そう思える事実こそ、確実に腑に落ちる作品を作り上げられた証明なんでしょうね。

HUNGER:4年半という数字は長い年月です。でも、今作を聴いてもらえれば、GAGLEが音楽と共に成長してきてこれたことを感じ取ってもらえると思います。「うぶこえ」や「聞える」は、先に話した「雪ノ革命」や「屍(を越えて)」とは違う特殊な曲になるけど、どんな楽曲であれ、GAGLEとしても、リスナーからも愛され大切にしてもらえる曲を、これからも作っていきたいと思っています。
(取材・文=佐藤公郎)

■リリース情報
『VG+』
(Jazzy Sport)
発売:3月5日
価格:2,500円

〈収録曲〉
01. ミチスガラ(Intro)
02. Stand Still
03. Dream Ticket
04. Cannonball Run
05. Dig It Out feat. PAPA U-Gee
06. 夢ノ住人
07. モン・ドコロ
08. 舌炎上 feat. KGE THE SHADOWMEN
09. Sound Of Silence
10. Straight No Chaser
11. 風の船のせて
12. 蠢け、グルーヴマンホール
13. Unfaded
14. CA LA MODE feat. Shing02
15. Space Mate -君が許すまで
16. 聞えるよ feat. 七尾旅人

■ツアー情報
『GAGLE VG+ Release Tour』
3/20 ( Turs ) 岡山 MARS
3/21 (Fri) 神戸 troopcafe
3/22 (Sat) 米子 Hasta Latina
3/29 (Sat) 吉祥寺SPC
4/19 (Sat) 新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
4/28 (Mon) 那覇 NEKKE2
4/29 (Tue) 那覇 Loveball
5/02 ( Fri) 福岡 Peace
5/03 (Sat) 北九州 ROCK ARROWS
5/04 (Sun) 佐賀 RAG G
5/05 (Mon) 熊本 2110
5/06 (Tue) 渋谷 VUENOS
5/17 (Sat) 大阪 TRIANGLE
5/18 (Sun) 京都 BLACK BOXxx
5/23 (Fri) 札幌 ACID ROOM
5/24 (Sat) 釧路 clubGREEN
5/30 (Fri) 松本 MOLE HALL
5/31 (Sat) 長野 FAME
6/28 (Sat) 横浜 Bridge
7/05 (Sun) 秋田 Jam House
7/12 (Sat) 福島 NEO
7/25 (Fri) 姫路 fab-space
7/26 (Sat) 高知 ONZO
7/27 (Sun) 花巻 なはんプラザ
8/30 (Sat) 八戸 MARQUEE

more info :
http://jazzysport.com/2014/gagle

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