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仙台を代表するヒップホップ集団、GAGLE『VG+』リリース記念インタビュー

GAGLE、震災経て見い出した音楽観「悩めば悩むだけいいものが生まれる、という問題ではない」

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20140319-GAGLE-thumb.jpg仙台のヒップホップシーンを牽引してきたグループのひとつであるGAGLE。

 活動の拠点を地元仙台に置き、MC HUNGERとDJ Mu-R、そして大半の楽曲を手がけるプロデューサーのDJ Mitsu The Beatsの3人で構成されるヒップホップ・グループ、GAGLE。前作『SLOW BUT STEADY』からおよそ4年半ぶりとなるニュー・アルバム『VG+』が先頃リリースとなったが、年月だけで考えれば決して短いインターバルではない。しかしそこには、東日本大震災で被災したという、避けては通れない障壁があったのは紛れもない事実。

 踏み出そう 互い讃えあって/苦しいときには 支えあって/痛み知って 分かちあって/力に変えて 繋いでいくんだ――彼らが震災直後に発表したチャリティ・シングル『うぶこえ』のフックは、こう歌われているが、「震災後、リスナーの気持ちを奮い起こす曲を作るべきか、それとも聴き手を笑顔にするユーモア溢れる曲を制作すべきなのか、正直悩んでいる」と、当時のHUNGERは語っている。ゆえに、この4年半という年月は、彼らにとって、“GAGLEらしさ”を見つめ直す、必要最低限の期間であったのだと思う。

GAGLE – うぶこえ(See the light of day)

 新作の“VG+”(=Very Good Plus)という言葉は、アナログの“コンディション”を示す用語で、「若干の傷は散見されるが、聴くことに至ってはなんら問題はない」という意味を持つ(ちなみに最上級の状態は“Mint Condition”、時点で“Near Mint”と続く)。

 ここには、東日本大震災で傷ついた痛みとを示すと同時に、GAGLEとして素晴らしい作品を作り上げることができ、何度も何度も(アナログのように)傷がついてしまうほど聴き入ってしまう、という彼らなりの自信の表れも込められている。

 葛藤と向き合い、「“GAGLEらしさ”とは何か?」を再確認するきっかけともなった『VG+』の真相を、HUNGERとMitsu The Beatsに聞く。

――前作から4年半という時間を要したのは、やはり震災の影響が大きかったのでしょうか?

Mitsu The Beats(以下、Mitsu):その間にOvallとの共演アルバム『GAGLE×Ovall』のリリースや、メンバー各々がソロで動いていたこともありますが、まったく影響していない、とは言い切れないと思います。アルバムそのもののテーマを悩み、HUNGERも震災を受けて、(ラップ特有の)言葉遊びだけには終始できない、という悩みを抱えたりしましたからね。

HUNGER:個人的に震災は非常に大きかった問題です。まず、アルバムそのものを作るべきなのか否か、という問題に直面したこともあり、メンバーと話し合いながら、どんな作品にすべきなのだろうか、と考えたり。前作からリリースまでにだいぶ時間を費やしてしまいましたが、こうしてアルバムを完成させられたのは、GAGLEとしてすごく意義深いことになったと感じています。

――実際に楽曲のバランスやコンセプトというのは、制作の段階で形を変えながらの進行となったのでしょうか?

HUNGER:アルバムの基盤を固めて、歌詞とトラックをメンバー、レーベルのスタッフと擦り合わせていった形です。ほとんどの楽曲は震災後に作ったもので、最終的に収録するかしないかの判断は僕がしました。それでも当初は「これは収録するべきではないかな」と思っていた時期もありましたが、制作期間に時間をかけたこともあり、時の経過がもたらしてくれたものも大きいと思います。

――タイトルはどのタイミングで決まったのでしょうか?

Mitsu:2年くらい前かな。僕と三浦(Mu-R)は普段から使っている言葉なんですが、そんな会話をしていたところをたまたまHUNGERが耳にしたことがきっかけでした。

HUNGER:ライブの地方遠征でホテルに向かう途中、兄貴(Mitsu The Beats)と三浦が後ろで「VG+でさ……(ゴニョゴニョ)」って会話をしていて、その言葉がすごく印象に残ったんです。ラッパーはアナログを買うとき、そこまでコンディションを気にすることはないけど、ふたりはDJなので、そうした言葉を普通に使っているんだなって。

 「VG+」の状態を決めるのって、レコードショップ店員の裁量によるものじゃないですか。もしかしたらミントかもしれないし、ニアミントかもしれない。なので、その裁量権を持つ店員を“聴き手”に置き換えて、GAGLEの作品「VG+」のコンディションを決めてもらおう、という意味も持たせています。

Mitsu:「VG+」の状態だからといって、多少の汚れた感じを曲に出すとか、タイトルを考慮しながら制作していったわけではないです。ただ、「VG+」という明確なタイトルが決まったので、むしろ作業はより自由になったような気がしますね。それが結果として、“GAGLEはやっぱりGAGLEなんだよな”と再確認することもできました。

HUNGER:確かに。震災のことや、これからのGAGLEはどうすべきなのか、と考えるあまり、無意識に制限をかけてしまっていたかもしれない、って。何からも影響されず、自然に作り上げる作業こそ、本当のGAGLEらしさにつながったんじゃないかな。その考えは、じつはピュアなのかな、って漠然と思ったり。

Mitsu:そういう意味で、まったくストレスのない状態でアルバムに臨むことができた。普段の生活のなかでストレスを感じることは多々あるけど、強要もなければ制限もない、今作は純粋に向き合って作り上げられた作品になったと感じています。

      

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