坂本龍一『スコラ』で“雅楽”を語る「ヨーロッパの音楽と比べて、リズムがズレている」

 後半では「雅楽の日本化」について取り上げた。日本の雅楽はアジアの他の国からも影響を受けており、東大寺大仏開眼供養では、唐をはじめ、朝鮮半島やベトナムの楽団も演奏を行ったとされている。しかし、平安時代に入ると雅楽寮(うたまいのつかさ)という、日本古来の音楽や大陸伝来の音楽を演奏家などの楽人に学ばせ、管理した国の機関が、様々だった楽器や音階などを見直し、日本の風土・文化に合った音楽を目指したそうだ。平安時代に尺八などの低音楽器を無くしたりなど、楽器の取捨選択をして、雅楽は日本人に合ったものに大きく変わっていった。

 ワークショップの後半では、日本の雅楽ならではの演奏方法について講義が進んだ。坂本は「日本の雅楽の演奏方法は独特で、それぞれの動きを、観察しながら演奏するため、他のヨーロッパの音楽と比べて、リズムがズレているように感じる」と、日本の雅楽独特のリズム感について語った。プレイヤー全員が、その一定のズレを許容したまま進行するらしい。そこで坂本から「全員がリズムを合わせたら、果たしてちゃんと演奏できるのか」というリクエストに対し、実際に楽団が1つのリズムに合わせて演奏をした。だが、出てきた音はやはりどこか拍子抜けのする音。坂本や子供たちは「味気ない」や「変なの」と、どこか違和感を感じたようだ。

 続いては、大陸から伝来した音楽である「声明」を紹介。声明とは、仏教の儀礼で唱えられる、僧侶たちの声による音楽。紀元前500年ごろ、インドで発祥した仏教。その仏教の波及と共に、声明も世界中に広がっていった。日本における声明の転機は、空海と最澄が開いた天台宗と真言宗が分かれたことだという。当時はそこまで違いがなかったが、宗派が変わったことにより、徐々にあり方が変わったそうだ。

 番組の最後には、現在のベトナム付近で、生まれた曲が元になったといわれ、唐を経て、736年に日本に伝わったとされる「陪臚(ばいろ)」を、伶楽舎のメンバーが見事に演奏した。

 日本の伝統音楽について、深く解説した同番組。次回、2月27日の放送では「能・狂言」について講義する予定だ。
(文=中村拓海)

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