坂本龍一『スコラ』で“雅楽”を語る「ヨーロッパの音楽と比べて、リズムがズレている」

 世界的音楽家・坂本龍一を講師に迎え、音楽の真実を時に学究的に、時に体感的に伝えようという『スコラ 坂本龍一 音楽の学校』(NHK Eテレ)のシーズン4・第5回が、2014年2月6日に放送された。

 2月期のテーマは「日本の伝統音楽」。ゲスト講師には前回同様、小沼純一、小島美子、星川京児を含む3名に加え、雅楽化であり、元宮内庁楽部楽師だった芝祐靖を迎えて放送された。今回は、大陸との交流によって生まれ、その後独自の発展を遂げた音楽である「雅楽と声明」について、芝が中心となり掘り下げて行く回となった。

 大陸から伝来した宮廷音楽「雅楽」は、元来は中国より伝わったものであり、平安時代に確立された日本の宮廷音楽。楽器だけで演奏される「管弦」、舞を伴う「舞楽」、歌を伴う「歌物」のそれぞれ3つに分類される。日本における雅楽の起源は2つあり、1つは日本古来の歌と舞、もう一つは中国や朝鮮、ベトナムなど、大陸の音楽だ。それらが複雑に影響し合い生まれたものが日本の雅楽なのだという。芝は雅楽の由来に関して、「唐の宮廷音楽を日本にとりいれたのが始まりといわれています。玄宗皇帝の時代(712~756年)に、新羅から帝への貢物として、梨園という場所に演奏家を集めて大合奏をしたといわれております」と語った。

 国際都市であった唐の都、長安には、様々な国からの音楽が集まっており、独自の音楽文化が花開いていた。その中で主だったものが、儒教の祭礼で演奏された「雅楽」と、ペルシャやインドなどの民族音楽であった「俗楽」だという。ここに中国古来の音楽が混ざり合って、宮廷音楽になったのが日本に出てくる直前の唐の雅楽である。だがこのうち、俗学の部分だけが日本に受け入れられた。日本にも古来より宗教的な音楽は存在したので、楽しむ音楽である俗学だけが入ってきたそうだ。その俗楽と、日本の宮廷音楽が混ざり合ったことで、日本流の雅楽となった。小島美子はこのことについて「日本は支配階層がしっかりしているから、支配していた側の階層が聞いていた音楽は、(他の音楽に)埋められることなく、文化としてしっかり残っている」と語った。

 音楽を体験しながら学ぶ「スコラ・ワークショップ」では、芝祐靖氏をゲスト講師に迎えて、日本の雅楽の響きを体験した。楽隊が目の前で演奏するのを見た子供たちは「宮殿の中で偉い人のためにやってる音楽」、「お払いの時の音楽に似ている」という感想を口々に述べた。坂本が子供たちに「楽器を近くで見て、演奏する方に楽器の特徴や話を聞いてみましょう」と指示をし、子供たちと演奏家の交流が行われた。琵琶や鉦鼓などの楽器が作られた過程や、楽団の中における役割などをそれぞれの演奏家が子供たちに語り、最後に自分の好きな楽器のそばで、それぞれが演奏を聴くことで、実際に音がどのようにして鳴っているのかを確かめた。

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