青木優が「洋楽バンドの再結成事情」を読み解く
ブラーが来日公演で見せた新境地 再結成バンドの"終わらない物語”を追う
実はブラーは、今までに一度も解散を宣言したことはない。しかし当人たちすら、このバンドが再度動くことが考えられない時期があったのは事実である。2009年の復活時にデーモンは「ブラーが終わったことなんて一度もない」という言葉を残しているが、あの時にはズバリ、REUNION(再結成)という言葉が盛んに使われたものだ。そこまでのプロセスについては2010年の映画『ノー・ディスタンス・レフト・トゥ・ラン』に詳しいので、未見の方はご覧になることを強くお薦めする。
ということで今回は、先日考察した日本の再結成バンド事情に続く、その洋楽編(主にロック)である。この何年かでやたら目につくのは、今回のブラーに合わせるつもりもないが、オアシスの話だ。兄弟間の確執が発端で2009年に解散したオアシスだが、今年2014年はデビュー作のリリースから20周年に当たるため、再結成に向けてのニュースがしょっちゅう入ってきていた。この案に弟のリアムは乗り気だったが(前妻への慰謝料にお金が必要とのウワサ)、兄のノエルのほうは再結成を固辞し、実現に至っていない。かと思えば、今度は元マネジャーのアラン・マッギーがバンド25周年の2016年に再結成するのではないかと発言するなど、この騒ぎはまだまだ続きそうだ。ちなみに、オアシスの再結成ワールド・ツアーに当たって提示されたギャラは、2000万ポンド(約34億円!)という情報もある。このへんは多分にゴシップ的とはいえ、具体的な金額まで報道されるドラスティックさは、日本の音楽シーンではほとんど見られないことだ。
さて、再結成組では、この1年ほどに限ってもマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(去年だけで3回も来日)、ストーン・ローゼズ、スマッシング・パンプキンズなどが日本のオーディエンスを熱くさせてくれたし、そのほか、再結成したことがあるのはハッピー・マンデーズ、ザ・ラーズ、パルプ。アメリカではジェーンズ・アディクション、エクストリーム、ストーン・テンプル・パイロッツ、ダイナソーJr.、ペイヴメント、ピクシーズ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、ベン・フォールズ・ファイヴ、Blink-182など、枚挙にいとまがない。お気づきだろうが、以上は主に90年代に活躍したバンドに絞っている。
さらに、80年代までの再結成バンドを、来日歴を中心に思い出すと……ザ・フーは、来日しない大物バンドの筆頭のまま80年代に解散してしまったが、再結成によって日本でも2回ライヴを実現させた。ジョン・ライドンはセックス・ピストルズもPiLも再結成させている。先頃、ボーイ・ジョージの復活が報じられたカルチャー・クラブ、ジーザス・アンド・メリーチェインやニュー・オーダーも再結成済み。ザ・ポリスは2008年に日本ツアーを敢行したし、ユーリズミックスは今月のグラミー賞に合わせて行われるビートルズのトリビュート・ライヴでの再々結成が報じられている。アメリカに転じると、一昨年の夏に日本に来たビーチ・ボーイズも、ある時期はほとんど解散状態だった。サマーソニックにドアーズが来た時はひどく驚いたものだ。イーグルスにも再結成までを含めた映画があるし、ドゥービー・ブラザーズ、NYパンクのテレヴィジョンも再結成組だ。この上にハードロックまで入れると、さらに混沌としてくる。ヴァン・ヘイレンもブラック・サバスも去年来たし、9年前のサマーソニックにディープ・パープルが出演したのはドアーズ同様、ウソみたいだった。プログレの再結成バンド? 多すぎて……とても追いきれない。
今年は、結成から50周年に当たるキンクスの復活も取り沙汰されている。さらに先だってからウワサされていたビートルズは、グラミー賞でポールとリンゴが共演することが明らかになった。もっとも、さすがにこれは再結成とは言えないだろうけども。
それから去年は、しばらく休止していたフォール・アウト・ボーイ、それにザ・フラテリスが再活動に入った(どちらも解散をしたわけではなかったとのことだが)。その前にはアット・ザ・ドライヴインも再結成していたりと、近年は2000年代以降のバンドの休止~再結成が始まっているのだ。