柴 那典「ロックフェス文化論」 第2回

サマソニ第一弾出演者決定 ヘッドライナーにA・モンキーズ選出でUKロック色強まるか

 8月16日、17日に開催される都市型ロックフェスティバル「サマーソニック2014」(以下サマソニ)の第1弾出演アーティストが発表された。

 第一弾のヘッドライナーとして発表されたのは7年ぶりの出演を果たすアークティック・モンキーズ。

 前回2007年の出演時にはサマソニ史上最年少、デビュー最速で「大抜擢」のヘッドライナー出演を経験した彼ら。その後は着実にキャリアを重ね、いまや名実ともにイギリスを代表するロックバンドの地位にまで上り詰めた。昨年にリリースした5作目のアルバム『AM』は世界23ヶ国でiTUNESチャート1位を記録、海外各メディアでも2013年の年間ランキングの上位に位置する高い評価を集めている。押しも押されもせぬUKロックシーンの代表となった彼らが、その風格と共に7年ぶりのヘッドライナーをつとめるわけだ。

 その他、ロバート・プラント、アヴェンジド・セヴンフォールド、フェニックスの出演が決定。サマソニ前夜のオールナイトイベント「ソニックマニア」のベッドライナーとして、カサビアンの出演も同時に発表された。

 さて、ここでは、今回の第一弾発表でアークティック・モンキーズがトリをつとめることが発表された「意味」を探り、そこから今年のサマソニの傾向を読み解いてみよう。

 というのも、実は、サマソニは日本のロックフェスではほぼ唯一「その日にトリをつとめるバンドの音楽ジャンルからラインナップの傾向がつかめる」フェスティバルなのだ。オールジャンルの都市型ロックフェスとして、海外の大物アーティスト、JPOPの人気バンド、女性アイドルグループ、KPOPやアジアンポップスまで幅広い出演陣を実現しているサマソニ。一見総花的に見えるが、その一方でメインステージは明確なジャンルの打ち出しを意図したラインナップになっているのである。

 昨年の2013年で言えば、メタリカがヘッドライナーをつとめた東京1日目が象徴的だ。この日は他にもリンキン・パーク、ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン、マキシマム ザ ホルモンなど、ラウド/メタル系のバンドが集結。BABYMETALが「天下一メタル武道会」と位置づけたこの日のサマソニでメタリカのラーズ・ウルリッヒやカーク・ハメットと邂逅を果たしたりもしている。

 2012年にはリアーナがヘッドライナーをつとめた東京2日目にKE$HAやピットブルが出演しR&B系のラインナップが実現。2011年にはヘッドライナーをつとめたザ・ストロークスと共にビーディー・アイやTHE BAWDIESが出演した「ロックンロール・デイ」が、2010年にはヘッドライナーのJAY-Zと共にNASやKREVAが出演した「ヒップホップ・デイ」が、それぞれ洋楽と邦楽の壁を超えて実現している。

 こうやって見ていくと、今年のアークティック・モンキーズのヘッドライナー出演が持つ意味はハッキリする。「UKロック復権」だ。ジェイク・バグやザ・ストライプスを筆頭に、今のイギリスからは若手のイキのいいロックンロール・アクトが続々と登場してきている。特にジェイク・バグは昨年のサマソニで初来日を果たし、バンドセットで堂々としたパフォーマンスを見せている。おそらくこの辺りをメインステージに抜擢し、本国イギリスでも着実にシーンを塗り替える新世代ロックンロール・アクトが集結する一日が実現するはずだ。

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