TOKYO No.1 SOUL SETにはなぜ後継者がいない？ その特異な創作スタイルに迫る

――川辺さんはトラックメイカーとして、その時代の音楽のフロントラインを常に見据えてきた印象があります。今は90年代などと比べると、シーンが多様化していることもあってフロントラインが見えにくい時代のような気もしますが、いかがでしょうか。

川辺：僕の場合、子どもの頃からの好みで、変わらないラインが一本強くあるんですよ。で、それに肉付けするために時々に影響を受ける音楽はある。（その時々の音楽は）化粧みたいなものですね。

――その変わらないライン、具体的には？

川辺：例えばロックにもジャズにも、それぞれに好きなラインがあって、それ以外には特に興味はない（笑）。たくさん聴いているように見えるかもしれないけれど、結果的にはすごく狭くて、流行っている音楽の中でピンとくるものは1割くらいです。軸に何か黒いドロドロしたものがあって、あとはその味付けですね。最近のものは聴いてはいますけれど、特に作るものに影響を与えるわけではなかったですね。俊美君に聴かせてみて、その反応を見る、ということは多いです。毎回やっているんですけど、「今度のアルバムでさ」というような話はせずに、何となくYouTubeなどで、おもしろ動画の合間に見せたりして催眠術のように（笑）。

――今回はどんなものを？

川辺：いろいろありますよ。普通にAlicia Keys With Jay Zのライヴ映像とか、ありとあらゆるかっこいいと思う音楽を送ったり見せたり。僕がそれを直接どうにかしようと思うよりは、俊美君の中での反応を待つ方が面白い。

――俊美さん、「これいいじゃん！」というものがあったりしますか。

渡辺：僕、たぶんポップセンスがゼロに近いんです。でもヒロシ君の中にはポップなものもあります。それが曲に出ているときは自分にない部分だから、拾ってトライして、という会話ではない掛け合いを毎回楽しんでいます。だからラテンフレーバーとか、ヒロシ君のトラックには全然ないんだけど、僕が自分を吐き出すとそれが出ちゃう、というだけ。

川辺：こっちからのラテンアプローチはないね。

――川辺さんの中のポップな部分というと、古くはフィル・スペクターなどもあるのではないかと感じているのですが。

川辺：そうですね。でもビートルズ、ビーチボーイズはないんだよね。

――モータウンは？

川辺：モータウンはあるね。フィル･スペクター、モータウン、ニューヨークサルサみたいな。そこにいって、Hip Hopという。

渡辺：バンドだとストーンズ、とか、そっちになってしまいますよね。でも「すごい」とは思っていても、それをやろうと思ったことはないですね。ポール･マッカートニーがソロになって全楽器やるのはすごく好きだけど。ソロアルバムってそういうことだと思っていたくらいだし（笑）。

――SOUL SETの場合は、バンドの組織論とは大きく違いますね。

川辺：僕たちは、バンドの中にシンガーソングライターの人がいて、詞も曲もメロディも考える、というのとは全く違いますからね。詞を書く人とメロディを書く人とトラックを作る人が別にいる、という形態だと、まぁ…ストーンズにはならないよね（笑）。

――この形態を継ぐ人たちは、実はいませんね？　2MC＋1DJはよくいますが。

渡辺：誰かいたら見たいな。ちゃんとフォーマットも明かしてるのに、誰もやってくれないね（笑）。

後編に続く　
（取材＝編集部）

■アルバム情報
『try∴angle』
発売：12月4日
価格：【CD+DVD】￥3,675
【CD】￥2,940

＜収録曲＞
01. Stand Up
02. 砂漠に降る粉雪
04. この世界に、
05. 眠れる街よ
06. 夏の面影
07. あの日の蜃気楼
08. BLENDA
09. Slope up
10. I’m So Crazy!
11. One day

■ライヴ情報
TOKYO No.1 SOUL SET 毎年恒例の大忘年会イベントライブ「try∴angle」公演
12月29日(日)　 東京　LIQUIDROOM　　開場/17:00　開演/18:00
出演者：TOKYO No.1 SOUL SET、鎮座DOPENESS & DOPING BAND-EXTRA SESSION STYLE-without 柿沼和成(DRUMS)、Houribe LOU
DJ：荒川良々

TOKYO No.1 SOUL SET Official Site