「表現は持ちネタがなくなってからが勝負」TOKYO No.1 SOUL SETが“紆余曲折の23年”を語る

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ジャンルを超えたサウンドは、活動開始から23年を迎える今も進化中。(写真=埼玉泰史)

渡辺:洋楽聴くときってそうですよね? 意味はわかっていないけど響きだけで聴いてる。その感覚は変わらないかな。

――なるほど、今のみなさんの創作スタンスが伝わってきました。少し別の角度からお話をうかがいますが、90年代に音楽シーンの寵児として登場した頃の音作りと、SOUL SETで今やっていることは延長上にありますか? それとも違うものなのでしょうか。

川辺:最初はとにかく「○○風」にならないように気をつけていました。そういうのがすごく多かったから。Hip Hopは好きだったけど、Hip Hopに寄せるのも違うと思っていて、どうにか自分たちのオリジナルの音像であろう、と七転八倒しながら作っていました。でも3枚目作ったあたりから「このラインは完全に自分たちのサウンドだ」というものが見えてきたので、今度はそこを行くだけです。だから今は前よりはずっと楽です。当時は経験もやり方もヴィジョンもなかったから。小説でも何でも、表現は持ちネタがなくなってからが勝負だと思うので、引き出しも随分前に空っぽになって(笑)、今はまっさら。持ちネタがなくなって楽になりました。手ぶらでスタジオ現れて、ニコニコしながら「何しよっか?」っていう感じですね(笑)。

――俊美さんはその「手ぶら感覚」を共有されていますか。

渡辺:「良いか悪いか」というよりも「かっこいいかかっこよくないか」「面白いか面白くないか」という感覚でやっていることは確かですね。以前は答えが意外と見つからなかった気がします。

川辺:今回のアルバムで、すごいことができる、と思いました。一人でこれを1から考えて作ることなんて絶対に無理です。こういうことができるなら、もっとできると思います。

――アルバムでは打ち込みディスコっぽい「BLENDA」がフックになっていますよね。

渡辺:『BLENDA』っていう雑誌あるんだね?

川辺:「BLENDAのこと考えて作りました」って言って編集部に送ろうよ(笑)。

渡辺:突然「BLENDA」って降りてきたの?

BIKKE:そう…だね。雑誌のことは考えてなかったから、パクリじゃない(笑)。

川辺:最初はインストの曲にしようと思っていたんだけど、ある日家に帰ってきたらデータが送られていて「BLENDA」って歌ってた(笑)。

渡辺:自分で歌っててビックリしたもん(笑)。

川辺:新しい鉱脈あるなぁ。デヴィッド・ボウイ調のメイクした俊美が見えたもん(笑)。次の俊美君のソロ、ナイル・ロジャース的な完全なポップビルドの、やらされてる感アリアリのアルバムできると思うなぁ(笑)。楽器持たないやつね。

――それ聴いてみたいですね(笑)。今作には手応えもあるでしょうし、SOUL SETがまた新たな局面に差し掛かっているようにも思えます。

川辺:でも23年やって7枚目って相当……。

渡辺:出てねえな(笑)。

――2000年代前半に空白の時期があって、突然またペースが早くなりましたね。

渡辺:そのへんがバンドと違うんでしょうね。バンドは10枚目くらいになると、もうロックンロールできない感じ、というか、どうしても行き詰まるじゃないですか? 僕らは前々回からゲストも含め、いろいろ受け入れられるようになって、今まで出していない要素を出せるようになった。だから……まだまだできますね!
(取材=編集部)

■アルバム情報
『try∴angle』
発売:12月4日
価格:【CD+DVD】¥3,675
【CD】¥2,940

<収録曲>
01. Stand Up
02. 砂漠に降る粉雪
04. この世界に、
05. 眠れる街よ
06. 夏の面影
07. あの日の蜃気楼
08. BLENDA
09. Slope up
10. I’m So Crazy!
11. One day

■ライヴ情報
TOKYO No.1 SOUL SET 毎年恒例の大忘年会イベントライブ「try∴angle」公演
12月29日(日)  東京 LIQUIDROOM  開場/17:00 開演/18:00
出演者:TOKYO No.1 SOUL SET、鎮座DOPENESS & DOPING BAND-EXTRA SESSION STYLE-without 柿沼和成(DRUMS)、Houribe LOU
DJ:荒川良々

TOKYO No.1 SOUL SET Official Site

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