aikoのメロディはなぜ心に残る? ミュージシャンが楽曲の“仕組み”をズバリ分析

 今年でデビュー15周年を迎え、7月から始まった全国ツアーも残すところ2公演となったaiko。全公演のチケットが完売しており、相変わらずの人気者だ。

 キャッチーな楽曲で幅広い層に受け入れられているaikoだが、音楽業界内からの評価も高い。例えば松任谷正隆は、自身が司会を務めていた音楽番組『FUN』にて、「カブトムシ」を絶賛。人生で初めて購入した邦楽CDであることを明かしている。ジャズミュージシャンの菊地成孔も、初めて「くちびる」を聞いたときに身動きがとれないほどの衝撃を受けたという。また、『SMAP×SMAP』にaikoがゲスト出演した際には、木村拓哉に「曲、くれよ!」とねだられたこともあった。

 aikoの楽曲は、なぜこれほどまでに人の心を掴むのか。同じくミュージシャンであるトレモロイドのキーボード・小林郁太氏に話を聞いた。

“aikoっぽい曲展開”の秘訣は「6度メジャー」にあり

aikoの楽曲は、初めて聞く曲であってもイントロだけで「aikoだな」とわかるほどの特徴がある。小林氏によると、その独創性を生み出しているのはコードだという。

「ポップスでよく使われるのは一般にメジャースケール(長調)と呼ばれるもの(キーが『ド(C、ハ)』なら黒鍵盤なしのドレミファソラシド)。そのスケール上の音程を使っている限りはそうそうおかしく聞こえません。しかし、aikoさんはスケールから外れるコードを多用するんです。

 彼女がよく使うコードの中で、“aikoっぽい曲展開”だと感じさせるものは、『6度のメジャー』です。Cメジャーなら『ラ・ド・ミ』ですが、これが『ラ・ド#・ミ』になる、ということです。

 これは、それまでの展開から少し意外な響きを挟んで次の展開へと渡す際によく使われるコードですが、聞き心地が重要なポップスではそれほど多くは登場しません。通常、6度はマイナーコードで、暗くて落ち着きのいい響きとなり、とても“おいしい”からです。しかしaikoさんは、フックをかけるときに6度メジャーを多用します」

 例えば「花火」なら、Bメロ4小節目の「三角の目をした羽ある天使が恋の知らせを聞いて」の「聞いて」の部分、「カブトムシ」なら歌い出し6小節目の「悩んでる体が熱くて指先は凍える程冷たい『どうした はやく言ってしまえ』」の「ってしまえ」の部分がこれに当てはまるという。

aiko『花火』(ポニーキャニオン)

独特なコード進行をメロディラインで中和

 ここまで説明した6度のメジャーコードに代表されるように、聞き手に「心地よくも、少し突飛」な印象を与えるaikoの楽曲。小林さんはさらに、aikoの歌のおもしろさはメロディラインにもあると指摘する。

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