濱野智史の地下アイドル分析(第3回)
「顧客対応は大企業よりも優秀」サービス業化する地下アイドルが日本社会を変える!?
――濱野さん自身も、“小学生メンバーを推してみようかな”と思うことはあります?
濱野:いや、ないですね(笑)。僕自身にロリ属性はなく、アイドルとの間に適切な距離感があった方がいいので、むしろある程度の社会性に目覚めている、大人メンのほうが推しやすいんです。とはいえ、12~15歳くらいの超絶美少女のアイドルを見たとき、 “今チェキを一緒に撮っておかないと、次に会ったときには可愛くなくなっているかもしれない”という感覚に襲われることはあって、思わず「今でしょ!」のノリでチェキを撮ることはしばしばあります(笑)。
話を戻すと、やはり“いまこの瞬間しかない”という瞬間爆発消費型のジャンルとして、アイドル文化が盛り上がっていることは間違いないと思います。でもそれと同時に、アイドル文化というのは、メンバーなりヲタ同士なりで関係性を築いて、応援共同体を築くことができる。だからそこは決して刹那的なだけというわけでもなくて、ある種の中長期的な絆ももたらしてくれる。人間関係が希薄化して流動化しきった現代社会においては、非常に重要な役割を果たしていると思います。
まあ、応援共同体ということならスポーツのサポーターになるのも同じですけど、サッカーは選手から認知されたりレスもらったりはしませんからね(笑)。関係性を作るという意味では違いがあります。
――当面、地下アイドルの世界は成長を続けていくと?
濱野:僕はそう思っていますね。これはわりと意見が分かれる議論で、世間的には“いつまでもこんなものが続くわけがない”という意見のほうが多いかもしれない。「アイドルブームは今年で終わる」みたいな議論はしょっちゅう聞きますしね。特に音楽業界は、普通にやってたらなかなかCDが売れないから、アイドル商法で売っていくしかない状況ですよね。だから音楽業界の人としては“このブームはいつまで続くだろう?”と思ってヒヤヒヤされているかもしれません。将来バカ売れして投資を回収できることを見越して、いま持ち出しで赤字経営を続けているアイドルグループだとすると、持続できなくなってバタバタ潰れていく、みたいなことはあるかもしれませんけど。
でも僕は、アイドルって「1コンテンツとして流行している」という風には見えないんですよ。そもそも“流行っている”という発想自体が、そもそもマスメディア時代のロジックです。マスメディアに見つかる前にイノベーターがいち早くイケてるものを敏感に拾い上げて、それがマスメディアに露出するようになるとバーっと大衆に広がってメジャーになり、同時にカルチャーとしては陳腐化していく。そしてイノベーターは次なる流行を探す……と。確かに、地下アイドルが地上に上がるときにはマスメディアを借りる必要があります。まさにAKBもそうだったわけですよね。
でも、地下アイドルなりAKBなりがいまも実践している「会いに行くことができて認知されて関係性を作れる」という近接性を生産していくメカニズムは、なんというか流行に左右されるものというより、ある種のプラットフォームなんだと思うんですよ。ミクシィとかツイッターとかフェイスブックと同じで、ある種のソーシャルな関係性を生み出していくシステムそのものなんです。だから、爆発的にユーザーが増えてくブームが今後起こるかどうかは微妙ですけど、急速に廃れるという感じでもないと思う。ブログもミクシィも、もはやブームはとっくに去ったけど、いまだに現役で使われているのと同じで、このままシステムとして残り続けていくんじゃないかなと思います。
それに僕自身もつい2年くらい前まで全くアイドルオタクではありませんでしたし、それでもこのシステムの面白さや重要性にはすぐに気づくことができた。ここまで申し上げてきた時代的な必然性を考えても、まだまだ地下アイドルの潜在的なユーザーは多いと思うんですけどね。