音楽業界の常識"ニッパチは売れない"を覆す、ホルモン『予襲復讐』のメガヒット

 この「ホルモンの夏」現象には、前述したニッパチを巡っての日本の音楽業界の大きな構造変化も寄与している。音楽業界にとって1年で最も枯れ期だった8月が、ここ数年、局地的に年間通して最大の繁忙期となっている。言うまでもなく、それは夏フェスの現場だ。先週の当コラムでさやわかさんは正月明けのヒットチャートにおける「紅白効果」について書いていたが、それに比べればまだスケールは小さいものの、8月のヒットチャートにおける「フェス効果」も見過ごせないものになりつつある。6月にリリースされたきゃりーぱみゅぱみゅのアルバムが、ここにきて週間チャートで謎の再上昇(17位→16位→13位。デイリーではしばしばトップ10に復活する日も)の軌跡を描いているのも、約5万人強のオーディエンスを前に熱演したROCK IN JAPAN FESTIVALの余波と無縁ではないだろう。

 そう考えると、日本全国の主要夏フェスを絨毯爆撃中のホルモンが、『予襲復讐』のリリース日を7月31日としたのはつくづく絶妙のタイミングだった。実はアルバムの音自体はかなり以前から仕上がっていて、オマケの156ページ解説本の制作に膨大な手間と時間を費やしたことでこのリリース日にずれ込んだという話も聞いているが、結果的には、まるですべてを狙いすましたかのような、必然のメガヒットと言えるのではないでしょうか。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

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