映画館の予告編は長すぎる? サブスクリプションの浸透にともなう広告モデルの変化

映画館の予告編は長すぎる?

 東京は立川にある独立系シネコン、【極上爆音上映】等で知られる“シネマシティ”の企画担当遠山がシネコンの仕事を紹介したり、映画館の未来を提案するこのコラム、第42回は“映画館の予告編は長すぎる?”というテーマで。

何をもって「長い」とするのか

 映画の予告編をめぐる問題はたくさんあります。よく取り上げられるのは「ネタバレ」問題。映画の「おいしいシーン」を数珠つなぎにして観せてしまって、本編鑑賞が確認作業みたいになってしまうというヤツですね。派手なアクション映画にありがちです。こういうのは、予告編が面白さのピークであることも(笑)。

 作りがうますぎて、予告編だけで観た気になってしまうものもあります。最近なら『フォードvsフェラーリ』の第2弾予告がそんな感じでした。メチャクチャよく出来ていて、ビシッとストーリーが頭に入ってきます。ただ本編はこの予告編の満足感と予定調和の印象をはるかに上回ってくれるので、予告編だけで満足していた方は、今すぐ映画館へどうぞ。

 あとは、予告編と本編の内容が思っていたのと違う、というのもありますね。少し古いですが、僕がこの宣伝プロデューサー天才か、とほとほと感心したのが『ローマ法王の休日』です。これナンニ・モレッティ監督作品なわけです。素晴らしい作品ですが、はっきり言って、コアな本格映画ファン向けの監督です。普段ハリウッド映画とか話題の邦画を楽しんでいる方が観て、面白いわけがありません。

 ところがポップなタイトルへの変更、キュートなポスターデザイン、ライトでユーモラスな予告編で、僕のいるシネマシティでも100席クラスの劇場で満席が頻発するほどに大ヒット。『青春のくずや~おはらい』『親愛なる日記』の監督の作品を、シネコンで満席にすることもできるという、これは宣伝する側から観た好例中の好例でしょう。ダマされたお客様はたまったもんじゃないでしょうけど(笑)。

 さて予告編は様々な観点から語れるものですが、今回取り上げるテーマは、映画館での予告編のあり方についてです。映画館での予告編というと「長い問題」が最も話題になるテーマでしょう。ただこの問題を、普遍的に語るのは非常に難しいですね。まずそもそも何をもって「長い」とするのか。

 判断要素のひとつは、映画館に、もっと言えば同じ映画館に、どのくらいの頻度で行っているか、ということでしょう。長く感じる要因のひとつは、すでに観たことがある映像、もちろん映画の予告編だけでなくCMやマナー映像を含めてですが、これが続けば長く感じます。年に1回や2回しか映画館に行かない人や、その映画館で観るのが初めてならば、すべての映像が新鮮ですから、20分近かったとしても、まあなんとか耐えられなくもありません。逆に同じ日に2本とか、翌週に同じ劇場で観た場合は、ほぼ同じ映像を再び観ることになり、これは10分でも長いということになるかも知れません。映画の予告ならば、その作品に興味があるかないか、というのも大きいですね。

 特殊例ですが『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の時は全国の映画館で予告編の無料上映会が行われたこともありました。そして結構なお客様が集まりました。こうなると長いも短いもありません。お金を払ってでも観たい、というファンがいる作品もあります。お客様の興味のあるなしは、予告編の編成の問題でもあります。

 本編と関連性があったり、ターゲットが似ている作品の予告を流せば、むしろもっと色々観たい、という方も現れるのではないでしょうか。

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