立川シネマシティ・遠山武志の“娯楽の設計”第42回
映画館の予告編は長すぎる? サブスクリプションの浸透にともなう広告モデルの変化
灯りが落ちたら本編開始がベスト?
このコラムではよく映画館は演劇やコンサートのあり方に近づきつつある、と書いています。それでいうと、演劇やコンサートで、場内の灯りが落ちたあとに宣伝が始まることはまずありません。ただし音楽系だと、始まる前に大きなスクリーンや常設のモニタでCMが流れているのはよく見ます。アリーナとかドームとか、主に大きな会場ですね。ブルーノートとかビルボードライブのようなハコでもずっと流していますね。
演劇では、規模が大きな作品の場合はCMも流れることはありますが、宣伝のメインは入場時に渡される大量のチラシでしょうか。この流れに沿うと、予告編を流すのは入れ替え中だけ、ということになるかも知れません。今も入れ替え時間に予告編を流す映画館はありますが、たいてい場内灯が落ちてからも流しています。
未来には、入れ替え中には流しても、灯りが落ちたら流さないのが常識になるかも知れません。これが予告編やCMは流したいし、楽しみにしている人もいる、というところと「課金は広告排除」感覚との折衷案になる気もします。
映画館としては、この未来、ありがたい側面もあります。より上映回数を増やすには、予告編上映は短いほうがいいに決まっているからです。たとえば20分も流したら、1日5回上映だとすると1時間40分にもなるわけです。これを全カットできるなら、短めの作品をあと1回増やせます。増やせなくても、早くなりすぎ、遅くなりすぎの上映時間をもっとうまく調整できます。
こういう未来はまだ数年は来ないでしょうし、そもそも来ないかも知れませんが、想定はしておいても良いでしょう。珍しく、僕からの新アイディア、新提案はありません。問題提起のまま終わります。
ただ、ひとつ言っておきたいことがあります。どんなことも、当たり前ではない、ゼロベースで考える必要がある、ということです。そこからしか生まれないことがあります。
You ain't heard nothin' yet !(お楽しみはこれからだ)
(文=遠山武志)
■立川シネマシティ
映画館らしくない遊び心のある空間を目指し、最高のクリエイターが集結し完成させた映画館。音響・音質にこだわっており、「極上音響上映」「極上爆音上映」は多くの映画ファンの支持を得ている。
『シネマ・ワン』
住所:東京都立川市曙町2ー8ー5
JR立川駅より徒歩5分、多摩モノレール立川北駅より徒歩3分
『シネマ・ツー』
住所:東京都立川市曙町2ー42ー26
JR立川駅より徒歩6分、多摩モノレール立川北駅より徒歩2分
公式サイト:http://cinemacity.co.jp/