立川シネマシティは『ベイビー・ドライバー』をどう宣伝? 局地的ヒット狙う戦略を明かす

立川シネマシティ『ベイビー・ドライバー』戦略

 この文章で注目していただきたいのは、意外に細かく考えているんだな、なんてことではなく、実は映画の基本情報の説明をまったく入れてないことです。

 ニュースページには予告編動画と、公式サイトへのリンクを貼って、それで終わりにしています。

 実はすでに今夏にフェス化して仕掛けている、「夏の極上爆音上映フェス2017」の告知ページで複数本映画を紹介しているのですが、いずれも誰が出演していて、誰が監督で、どんなストーリーなのかという情報をばっさりカットしてあります。詳しいことは予告編か公式サイトを見てね、ということです。その代わりに、なぜこの作品を取り上げるのか、ということだけを記しています。これが“今の感覚”だと考えたからです。

 批判覚悟の実験のつもりでしたが、このことにツッコんだ方はほとんどいなかったですね。むしろ言われなければ気づかないと思います。

 つまりわざわざ映画館のサイトに来ている時点で、観たい方はその作品の基本的な情報はなんとなく頭に入っているか、あるいは入ってなくてその作品が気になる方は直上の予告動画を再生するわけです。

 余計なテキストを削ることによって、こちらが伝えたいことをより短く伝えられ、短いものは読んでいただける可能性があがります。

 映画館のHPを観に来るような方はすでになんらかの手段で公式の宣伝を観ている、と勝手に決めつけてしまって、映画館としては、より劇場特性を踏まえた独自の価値や意味を付加した宣伝を展開することが「局地的ヒット」を生む可能性を作ると考えています。公式の宣伝を映画館でも同じように繰り返しても、特別な新しい何かは生まれません。

 配給会社の小規模な宣伝より、自館でのチラシ配布や予告編上映や宣伝コーナー作りのほうが強い影響力があるようなミニシアターのスタッフの方からは、そんなの30年も前からやってるよ、いまさら何言ってんだ、と叱られそうですが、シネコンではなかなか出来ていないことです。

 両刃の剣になりかねないリスクもありますが、映画館が無機的な再生装置ではなく、そこに“人”がいることをきちんと打ち出せれば、そのこと自体がひとつのエンタテイメントになり、その映画館で映画を観る価値を生み出せると信じています。

 僕ももっともっと勉強して、考え抜いて、短い文章一発で、また大ヒットを生み出せるように頑張り続けます。

 You ain't heard nothin' yet !(お楽しみはこれからだ)

追記:シネマシティの「ベイビー・ドライバー」宣伝戦略が成功しているか否か、これを書いている時点ではまだわかりません。リンク先の座席の埋まり具合でご確認ください。どうしよう、偉そうに語って、最大劇場あけるのに、空席目立ってたら(笑)。

立川シネマシティ「ベイビー・ドライバー」作品ページ

(文=遠山武志)

■立川シネマシティ
映画館らしくない遊び心のある空間を目指し、最高のクリエイターが集結し完成させた映画館。音響・音質にこだわっており、「極上音響上映」「極上爆音上映」は多くの映画ファンの支持を得ている。

『シネマ・ワン』
住所:東京都立川市曙町2ー8ー5
JR立川駅より徒歩5分、多摩モノレール立川北駅より徒歩3分
『シネマ・ツー』
住所:東京都立川市曙町2ー42ー26
JR立川駅より徒歩6分、多摩モノレール立川北駅より徒歩2分
公式サイト:https://cinemacity.co.jp/

■公開情報
『ベイビー・ドライバー』
8月19日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
監督・脚本:エドガー・ライト
製作:ニラ・バーク、ティム・ビーバン、エリック・フェルナー
出演:アンセル・エルゴート、ケヴィン・スペイシー、リリー・ジェームズ、エイザ・ゴンザレス、ジョン・ハム、ジェイミー・フォックス
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
公式サイト:http://www.babydriver.jp/

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