『WIND BREAKER』『あんぱん』『あんたが』 濱尾ノリタカ、2025年は“大発見”された1年に

濱尾ノリタカ、2025年は“大発見”の1年に

 2025年、濱尾ノリタカの存在感が際立っている。

 NHK連続テレビ小説『あんぱん』では、戦地で非業の死を遂げる兵士・岩男と、その息子である長髪の美青年・和明を演じ分けた。きょろきょろと瞳を動かし、どこかヒョウキンな雰囲気を漂わせる岩男とは対照的に、和明は憂いを帯びた美しい眼差しが印象的な好青年。同じ俳優が演じているとは到底思えず、その変幻ぶりには驚いたものだ。

濱尾ノリタカ、『あんぱん』『べらぼう』出演で飛躍の年に? これまでの軌跡を振り返る

若手注目俳優が多数出演しているNHK連続テレビ小説『あんぱん』。今田美桜や北村匠海などのメインキャストだけでなく、主人公の同級生…

 12月5日に公開された映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』では、桜遥(水上恒司)のライバルとなる十亀を演じている。十亀は、「獅子頭連」の副頭取であり、サングラスに三つ編みを揺らしながら飄々と歩む姿は、クールさの中に妖艶な一面が滲んでいた。

 濱尾の魅力は、三枚目のユーモラスな役から、心に影を宿した美青年など、多様な役柄を自在に演じ分けられる幅広さにある。本作においても、十亀はさまざまな表情を見せ、作品に奥行きと深みを添えている。本記事では、『WIND BREAKER』や過去の出演作を踏まえた上で、濱尾ノリタカの魅力を深く掘り下げていく。

 『WIND BREAKER』は、高校生の桜遥が「不良の巣窟」として恐れられる風鈴高校のてっぺんを獲るために奮闘するストーリー。本作の冒頭では、十亀の大きな瞳がスクリーンに映し出される。どこか哀愁を帯びた眼差しは、彼が単なる「最強の敵」ではなく、何か深いものを背負った人物であることを静かに物語っていた。

 十亀は、喧噪の渦中にあってもなお、ニヒルな笑みを浮かべ、飄々とした様子で振る舞いを見せる。「喧嘩上等!」と睨みを効かせる桜遥に対しても、まったりとした穏やかな口調で挑発する十亀。その落ち着いた様子と、あまり多くを語らない姿からは、言葉を発さずとも色気と狂気が滲み出し、チームの「カリスマ的存在」であることに説得力を持たせていた。

 濱尾の魅力は、色気を役に合わせて自在に操れるところだ。たとえば、朝ドラ『あんぱん』で岩男を演じた際には、その色気を完全に封印。恋する蘭子(河合優実)を見つめる瞳はふわりと揺れ、どこか頼りなげである。そして物語に再び姿を現すのは、岩男の息子・和明としての濱尾だ。伏し目がちな和明の眼差しからは、哀愁とほのかな色香が漂っていた。

 NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の第11回では、富本豊志太夫(寛一郎)と共に芝居小屋で活躍する歌舞伎役者・市川門之助を演じた。蔦重(横浜流星)が女郎たちのために富本節を聞かせてほしいと懇願すると、市川は意気揚々とした様子で「あたぼうよ」と応じ、得意げな表情を浮かべる。その後に披露された市川の舞は、手付きも滑らかで、まるで本物の女形のように艶やかだ。

『あんたが』“勝男”竹内涼真がついに自分の想いを告白 “後輩”濱尾ノリタカが存在感を発揮

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)第9話では、勝男(竹内涼真)と鮎美(夏帆)それぞれが仕事で抜擢されるも、思うようには…

 ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみてよ』(TBS系)では、主人公・勝男(竹内涼真)の同僚・柳沢を怪演。サスペンダーにハイウエスト、白いローファーという個性的な装いに身を包んだ柳沢は、寡黙でクールな存在だ。勝男が歩み寄ろうとすればするほど、その視線は冷ややかさを帯び、二人の間に「見えない境界線」が引かれていく。大きな瞳から放たれる眼差しには迫力があり、「(勝男のことが)僕には理解できない」という心の声がひしひしと伝わってくる。

 憎まれ役でありながらもなお、奥行きを感じさせる潤んだ瞳には色香が漂う。憎まれ役の柳沢がどこか憎めないのは、彼から滲み出るフェロモンのせいなのかもしれない。モデルとしての経験を持つ濱尾は、彫りの深い端正な顔立ちと、すらりと伸びた背丈が特徴的で、同じくモデル体型の竹内涼真と並んでも引けを取らない存在感を放っていた。

 濱尾は、色気を変幻自在に操れるからこそ、コミカルからシリアスまで演じ分ける幅広さを備えているのかもしれない。振り幅の広さや存在感は、彫りの深い顔立ちと演技力で広く知られる阿部寛をどこか彷彿とさせる。もしかすると、「ポスト阿部寛」と呼ばれる日が訪れるのも、そう遠くはないのかもしれない。

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