BOMIの『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』評:東京に生きていることを少し愛せるようになる

BOMIの『映画 夜空はいつでも~』評

 ヒロインの美香を演じた石橋静河ちゃんは、友達なんです。初めての主演映画ということで、大変だったんだろうなぁと思うところもあったのですが、石井さんの演出だったり、池松くんをはじめとする周りの役者さんたちとの調和によって、その不器用なまっすぐさがキャラクターに生かされて、物語が後半に進むにつれどんどん魅力的になっていきました。この作品でデビューできたのは、静河ちゃんにとってすごく幸せなことだなぁと、少し羨ましくも思います。こんなに大切に撮ってもらえることって、なかなかないでしょうから。今回は詩からの着想を得た映画ということで、朗読のような語りが多用されているのだけれど、静河ちゃんの声って、バリトンみたいに中域が深くてすごく聞きやすい。素敵でした。大注目されるのはこの映画を見て間違いなしなので、これからたくさんの経験を重ねて、どのような女優さんになっていくのかが今からすごく楽しみです。

 静河ちゃん演じる美香は、都会、というか東京に対して、すごくネガティブな思いを抱いています。私自身も都会で生きていく生きづらさを感じることがあるのだけど、それでも田舎に帰らずに、結局都会で生きることを選んでいるんですよね。

 私が大阪から東京に出てきたときに最初に思ったのが、東京の人は私のことをそっとしておいてくれるということ。例えば、道端とかで急に泣きたくなったことがあったとして、そこで思いっきり泣いたとしても、みんな放っておいてくれる。大阪だと「大丈夫か? 飴ちゃんいるか?」ってなってしまうんですけど(笑)。別に冷たいとかではなくて、個々に抱えているものがあって当然という感じがあるような気がして、私はそれが心地いいなと感じるんです。どこにいても孤独は感じるものですが、東京は特に孤独を感じやすい場所だなと。自分にぴったりの居場所はどこなのか、いつか見つかるのか……。そういう気持ちを抱えてる人にとっては、タヒちゃんの言葉ってすごく刺さるものがあると思います。東京に生きていることを少し愛せるようになる映画でした。あとは池松さんが歌うあのシーンだけは、絶対に映画好きには観てほしいなと。彼は映画の中でちゃんと存在して生きられる人、天才だなと思いました。

 近年の日本映画とは一線を画す作りになってる本作、気になった方は是非映画館で観ることをお勧めします。

(取材・構成・撮影=宮川翔)

■BOMI(ボーミ)
シンガー。2012年6月に日本コロムビアよりミニアルバム『キーゼルバッファ』でメジャーデビュー。2015年にセカンド・アルバム『BORN IN THE U.S.A.』を発表。そして昨年12月にはTOKYO RECORDINGSプロデュースによる最新アルバム『A_B』をリリースした。モデルや女優としても活躍中。公式サイトTwitterFacebook

■公開情報
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
新宿ピカデリー、ユーロスペースほか全国公開中
監督・脚本:石井裕也
原作:最果タヒ(リトルモア刊『夜空はいつでも最高密度の青色だ』)
出演:石橋静河、池松壮亮、佐藤玲、三浦貴大、ポール・マグサリン、市川実日子、松田龍平、田中哲司
エンディング曲:The Mirraz「NEW WORLD」
製作:テレビ東京、東京テアトル、ポニーキャニオン、朝日新聞社、リトルモア
配給:東京テアトル、リトルモア
(c)2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会
公式サイト:http://www.yozora-movie.com/

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