>  > 戦争の真実に迫る『モンスターズ/新種襲来』

進化した怪獣映画『モンスターズ/新種襲来』は戦争の真実に迫る

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モンスターズ/新種襲来
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 ギャレス・エドワーズ監督は、いま最も注目されている映画監督のひとりだ。2014年のハリウッド大作『GODZILLA ゴジラ』を成功させ、そのまま「GODZILLA ゴジラ」続編映画(2018年公開予定)での続投が決定し、さらに現在は、ディズニーが主導する「スター・ウォーズ」実写スピンオフ映画第一弾、『ローグ・ワン:ア・スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年公開予定)の監督に選ばれるなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いといえる。驚くべきは、超大作『GODZILLA ゴジラ』に抜擢されるまでに、エドワーズ監督は、出身国であるイギリスで劇場用作品を一本しか撮っていないということだ。彼が一気にハリウッドで才能を評価されることになった、その異色怪獣映画が『モンスターズ/地球外生命体』である。今回紹介する『モンスターズ/新種襲来』は、その続編にあたる。

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『モンスターズ/新種襲来』場面写真 (c)Subterrestrial Distribution 2014

 映画業界において伝説となった前作『モンスターズ/地球外生命体』は、低予算作品であることを逆手に取った、ドキュメンタリー風の斬新な手法が評価された。今回の続編では、ギャレス・エドワーズは製作総指揮にまわり、監督はエドワーズ同様にTV作品の演出を手がけていた新鋭・トム・グリーンにバトンタッチされているが、もちろん、前作の特異なスタイルと、アメリカの現在を追った痛烈な社会的テーマは、本作にも継承されている。驚かされるのは、その徹底振りである。もはやそれは、怪獣映画としては「問題作」と呼べるほどの前衛的な境地に達している。その挑戦的な作風からは、本作を「ただの続編にはしない」という作り手、とくに監督の作家的な気合いをビンビン感じさせる。今回は、この『モンスターズ/新種襲来』の前衛的な挑戦と、作品に描かれたアメリカの暗部に迫っていきたい。

ハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』の原形となった「モンスターズ」

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『モンスターズ/地球外生命体』場面写真 (c)Vertigo Slate 2010

 前作『モンスターズ/地球外生命体』の舞台は、宇宙探査機が連れ帰ってしまった「地球外生命体」が増殖し、危険地帯として外界から隔離され、荒廃したメキシコだ。その、巨大に成長した地球外生命体たちが徘徊する危険地帯を脱出すべく、アメリカ人の男女が、アメリカへの国境を目指すというストーリーである。

 この、二人の旅を追ったドキュメンタリー風の演出は、ギャレス・エドワーズ監督がBBCのドキュメンタリー番組を手がけた経験から、その手法を応用したものだろう。そこには、「今までで最もリアルな怪獣映画を撮りたい」という、エドワーズ監督の野心があった。その意図は実を結び、『モンスターズ/地球外生命体』は、ドキュメンタリー風であり、またロードムービー風の、独創的でリアルな怪獣映画となった。また、監督自身がVFXの技術者でもあるため、予算も抑えられている。

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『モンスターズ/地球外生命体』場面写真 (c)Vertigo Slate 2010

 この2年前に撮られた、『クローバーフィールド/HAKAISHA』も、「ファウンド・フッテージ」と呼ばれる、擬似ドキュメンタリーの手法が利用された、変則的な怪獣映画の大作だった。しかし、『モンスターズ/地球外生命体』は、本当に低予算で撮っていること、そして、ハリウッド大作でないからこそできる、アメリカ社会への過激な批判精神が込められていることが、まさに本質的な意味で「ドキュメンタリー」的であり、『クローバーフィールド/HAKAISHA』のリアリズムを、深刻なテーマ性によって凌駕しているといっていいだろう。

 『モンスターズ/地球外生命体』の舞台がメキシコなのは、作品のテーマとして、アメリカの「不法移民問題」に焦点が当てられているからだ。アメリカでは、メキシコ経由で毎年数万人もの、とくに中米の困窮した人々が不法に入国するという社会問題に、長年の間直面し続けている。そして、そこから発生すると思われる治安の悪化や、増え続ける移民の数に、市民の一部は不安や恐怖心を抱いているのである。この漠然とした恐怖のイメージが、作品の中で「巨大な怪獣」として登場し、それを防ごうとする社会的な心理が「巨大なバリケード」として象徴的に描かれているのだ。

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『モンスターズ/地球外生命体』場面写真 (c)Vertigo Slate 2010

 だが、アメリカが直面する移民問題は、外国から見ると、また異なったものに見える。『モンスターズ/地球外生命体』では、怪獣たちとともにメキシコに閉じ込められたアメリカ人が、怪獣と、それを攻撃するアメリカ軍の空爆の脅威に、現地人同様にさらされることで、現地の人々と同じ視点で、閉鎖的なアメリカの姿を眺めることができたのである。その姿は、非アメリカ人監督ならではの、アメリカの外からの視点で捉えた、より厳しい、客観的なアメリカ像であるといえるだろう。そして、このアメリカへの視点は、日本への原爆投下を批判的に暗示するシーンがあるなど、ハリウッド大作『GODZILLA ゴジラ』にも部分的に継承されている。ギャレス・エドワーズ監督は、このように語るべきことを持っている「作家」なのである。その姿勢が、作品に奥行きを与えているのだ。

     
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