『バットマン vs スーパーマン』や『貞子vs伽椰子』など、“対決モノ”映画が作られる理由
DCコミックスのバットマンとスーパーマンが対決する『バットマン vs スーパーマン』や、マーベル・コミックのアイアンマンとキャプテン・アメリカが対決する『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』、『リング』(1998)の貞子と『呪怨』(2003)の伽椰子が対決する『貞子vs伽椰子』など、近年、異なる大作映画の主要キャラクターが対決する作品が目立っている。(参考:スーパーマンがバットマンのマスクを剥ぎ取る! 『バットマン vs スーパーマン』新たな映像公開へ)
これらの作品は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のように、もともと原作がある場合もあるが、『貞子vs伽椰子』のように映画会社の枠を越えた試みとしてオリジナルのシナリオが描かれることも少なくない。(参考:『リング』と『呪怨』がコラボ! 『貞子vs伽椰子』、山本美月主演で2016年6月に公開)
なぜ、こうした“対決モノ”の制作が目立っているのか。その背景について、映画評論家の小野寺系氏に話を聞いた。
「近年、こうした映画が作られる傾向があるのは、『フレディVSジェイソン』(2003)のヒットを受けてのことだと思います。同作は、パラマウント社が配給していた『13日の金曜日』(1980)の人気低迷を受けて、その権利を『エルム街の悪夢』配給元のニューラインシネマ社に売却したことによって実現した企画で、結果として興収11,400万ドルを越えるヒット作となりました。翌年には20世紀フォックスが『エイリアンVSプレデター』(2004)を公開し、興収170,00万ドルの大ヒットを記録。かつての人気キャラクターに改めて脚光を浴びさせることに成功しました。この流れから、対決モノに注目が集まるようになったのでしょう」
ただ、対決モノ自体はかなり昔からあるものだったと、同氏は続ける。
「古くはユニバーサル・モンスターの初共演作品となった『フランケンシュタインと狼男』(1943)や、日米の怪獣が戦った『キングコング対ゴジラ』(1962)、勝新太郎と三船敏郎という当時の二大俳優が共演した『座頭市と用心棒』(1970)などが挙げられます。これらの作品は、人気キャラクター同士の夢のマッチングが観られるのが最大の魅力で、その時に脚光を浴びている者同士が共演を果たすケースもありますが、一方で観客から飽きられつつあるキャラクターを復活させようという制作者側の意図も、当初からあったようです。
また、映画はそもそも、見世物小屋からスタートしているものなので、たとえばコブラ対マングースのようなショーとして、こうした作品が作られるのは自然なことだと思います。しかし、コブラ対マングースとは異なり、違う文脈を持つ作品のキャラクターを共演させることにより、それぞれの作品の世界観が崩壊してしまう面があるのは否めません。そのため、一度こうした作品を作ると、しばらくは元の作品の続編が作れなくなるというデメリットもあります。逆に言えば、『貞子vs伽椰子』が成立したのは、両方の作品がすでに様々な物語を描き切ったからだとも言えます」
もっとも、原作などですでに世界観が確立しているものは、その限りではないという。