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高橋美穂の「ライブシーン狙い撃ち」 第11回

NAMBA69、175R、WANIMA……高橋美穂がメロディックパンクシーンの活況を読む

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高橋美穂
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 この春から夏にかけて、メロディックパンクバンド(及び、メロディックパンクから影響を受けたことがわかるバンド)のリリースが続く。HAWAIIAN6、Northern19、TOTALFAT、locofrank、GOOD4NOTHINGといった、2000年代から活躍しているバンド。COUNTRY YARD、Dizzy Sunfist、POT、ENTHといった、2010年代から飛躍したバンド。さらに御大と言える難波章浩が率いるNAMBA69、一時代を築き復活した175R、そして時代を象徴するロックバンドとなったWANIMA……もちろん、様々なタイミングが重なったところもあるだろうけれど、これだけ数多くのバンドが作品をリリースすることに、偶然だけではない因果を感じ得ずにはいられない。

 もちろん、CMソングでお茶の間も席巻し、今やさいたまスーパーアリーナを満杯にしてしまう人気者となったWANIMAの存在は、大きく関わっているだろう。とは言えWANIMAの場合は、「メロディックパンクを牽引している」というよりは「ジャンルを超えた存在感がある」という印象の方が強い。さらに、世の中にメロディックパンクが自然と馴染んでいる現状があるからこそ、WANIMAがそういった存在感を発揮し、ポップミュージックとして聴かれているのではないだろうか(もちろん、突出したキャラクターや才能は言わずもがな)。1990年代から、爆発期と沈静期を繰り返してきたメロディックパンクシーンは、時間を掛けて遂に市民権を得たのだ。

 「じゃあ、Hi-STANDARDは?」というクエスチョンは、当然出てくるだろう。才能的にもセールス的にも、間違いなくハイスタはメロディックパンクを世の中に広めた第一人者である。ただ、ハイスタは、メロディックパンクシーンの、もっと言えばバンドシーンのトップバンドという矜持を持って活動しているように見えた。『AIR JAM』の開催や、ライブハウスを廻り続けたこと、必要以上にメディアに出なかったことなどには、強い拘りが表れている。音楽性も違うので、比較するのもなんだが、WANIMAはそういった拘りから解き放たれているように見えるのだ。もちろんWANIMAなりに守り続けているものはあるだろうけれど、ハイスタ、2000年代から活躍しているバンド、そしてWANIMAをはじめとした2010年代に飛躍したバンドへとバトンが渡されていく中で、メロディックパンクバンドが活動しやすい地盤が出来上がってきたことは、間違いないと思う。

 特に今、改めて触れておきたいのは、2000年代から活躍しているメロディックパンクバンドの功績についてだ。ハイスタが活動休止してから、明らかにその影響下にあると思われるバンドはたくさん出てきたものの「雨後の筍」的な見方をされることも多かったし、実際にメロディックパンクシーンは沈静化していった。また、日本のメロディックパンクシーンが独自の盛り上がりを見せたことで、海外のメロディックパンクバンドから影響を受けるバンドや、海外のメロディックパンクバンドと交流するバンドが、90年代よりは減って、邦楽と洋楽の壁も高くなった。そんな中で、メロディックパンクバンドは、それぞれがそれぞれのやり方で、戦っていったのだ。歌謡曲のエッセンスを取り入れた、エモーショナルなサウンドを鳴らしたHAWAIIAN6。キュートと言えるほどのポップセンスを、惜しげもなく注ぎ込んだlocofrank。西海岸の風を吹かせて、洋楽と邦楽の壁を壊したTOTALFAT。キッズの目線に立ち、そのハートを打ち抜くフレーズを連発したNorthern19。大阪と西海岸を融合!?して、キャラクターの強いメロディックパンクを響かせたGOOD4NOTHING。さらに、ハイスタから影響を受けながらも、「青春パンク」と呼ばれた日本語ロックを追求し、紅白歌合戦にまで出演した175Rも、ある意味そのうちのひとつと言えよう。また、昨今リリースがあった(ある)バンドを挙げたが、もちろんこれらのバンド以外にも、たくさんのバンドが今も活躍し続けている。それは、時代に揉まれて、独自のスタイルとタフなスピリッツを手に入れたからだと思う。

 地盤ができてきた2010年代は、逆に独自のスタイルやタフなスピリッツを育てにくくなっていると言えるのかもしれない。しかし、WANIMAを筆頭に、この時代ならではのスタイルやスピリッツを持って活動しているバンドもたくさんいる。先に挙げた、COUNTRY YARD、Dizzy Sunfist 、POT、ENTHの新たなリリースは、もちろん注目してほしい。そして、04 Limited Sazabysが、『AIR JAM』のスピリッツを受け継ぐような自身のフェス『YON FES』を開催していることも重要だ(今年の『YON FES 2017』にはNAMBA69も出演した)。さらに、フェスで言うと、数々の注目バンドが出演する『SATANIC CARNIVAL』は、今年は初めての2Daysになって、6月に幕張メッセで行われる。

 めまぐるしい時代の流れの中で、メロディックパンクバンドのリリースが続いていることや、フェスシーズンの話題をかっさらうフェスがメロディックパンクシーン界隈で目立つことを、決して一過性のムーブメントなどと片付けてほしくはない。一部のコアな人だけではなく、多くの人が、メロディックパンクの強く逞しい音楽性・精神性を理解し、求めるようになったのだ。そして、メロディックパンクは、ライブで育てられていくジャンルだ。ライブに足を運ぶあなたの存在が、メロディックパンクの将来を担っている。

■高橋美穂
仙台市出身のライター。㈱ロッキング・オンにて、ロッキング・オン・ジャパンやロック・イン・ジャパン・フェスティバルに携わった後、独立。音楽誌、音楽サイトを中心に、ライヴハウス育ちのアンテナを生かしてバンドを追い掛け続けている。一児の母。

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